戦国策

『戦国策』は、中国の戦国時代（紀元前453年～紀元前222年）における、遊説の士たちの弁論や外交戦略、各国の政策、逸話などを国別にまとめた歴史書です。全33篇から構成され、前漢の学者である劉向によって編纂されました。この書物の名前が、時代区分としての「戦国時代」の由来となっています。

成立の背景

元々、『国策』『国事』など、複数の書物が存在していましたが、前漢の劉向がこれらを整理し、一つの書物としてまとめ、『戦国策』と名付けました。後漢時代には高誘によって注釈が加えられましたが、現存するのは一部のみです。その後、隋から宋の時代にかけて多くの異本が現れ、混乱が生じましたが、北宋の曾鞏が再校訂を行い、33篇構成を復元しました。これが現代まで伝わるテキストの祖本となっています。また、宋代の鮑彪による、国の分類と年代順を厳密にした10巻本も存在し、日本に流布した伝本の多くはこれを基にしています。

日本では、9世紀後半の『日本国見在書目録』に記録が見られ、江戸時代には多くの漢学者によって研究されました。林羅山による訓点本や、横田惟孝の『戦国策正解』などが知られています。

1973年には、馬王堆漢墓から出土した帛書に、『戦国策』と類似する記述が見つかり、『戦国縦横家書』と名付けられました。この発見は、『戦国策』編纂以前の姿を一部示すものとして、重要な意味を持っています。

戦国時代の背景

戦国時代は、周王朝の封建制度が崩壊し、各国が領土拡大を目指して争った時代です。小国は大国に併合され、戦争が頻繁に起こりました。しかし、各国は武力による侵略を避け、外交による解決を模索する動きもありました。この時代には、法家の商鞅や儒家の孔子など、様々な思想家や学者が現れ、また、諸国を遊説する縦横家と呼ばれる人々が活躍しました。特に『戦国策』では、これらの縦横家たちの活動が中心に描かれています。

『戦国策』の評価

『戦国策』は、文章の美しさにおいても高く評価されています。漢代の司馬遷は『史記』の文章の祖型を『戦国策』に見出し、宋の蘇東坡もその文章は『戦国策』に基づくと評しました。明代の学者もその文章を絶賛しており、古くから文学作品としても重要視されていました。また、『史記』の戦国時代に関する記述の多くが、『戦国策』を資料としている点からも、歴史資料としての価値も非常に高いと言えるでしょう。

内容

『戦国策』には、紀元前476年から紀元前222年までの約250年間にわたる、戦国時代の遊説の士たちの策略や弁論が記されています。その内容は、政治、外交、軍事など多岐にわたり、当時の社会情勢や人々の考え方を知る上で貴重な資料となっています。

日本語訳書籍

現代語訳としては、以下のような書籍が刊行されています。

常石茂 訳『戦国策』：平凡社東洋文庫より全3巻で刊行されています。また、抄訳版も存在します。
沢田正熙 訳『戦国策』：明徳出版社より上下巻で刊行されています。抜粋訳です。
近藤光男 訳・注解『戦国策』：集英社より全3巻、講談社より抄訳版が刊行されています。
林秀一・森熊男・福田襄之介 訳・注解『戦国策』：明治書院より全3巻で刊行されています。
町田静隆編『戦国策 新書漢文大系5』：明治書院より上記の抜粋版として刊行されています。

関連事項

縦横家：戦国時代に活躍した遊説家たちのことで、『戦国策』に多く登場します。
弁論術：遊説家たちが用いた、相手を説得するための技術です。
韓非子：法家の思想家で、『戦国策』と並んで戦国時代の重要な文献です。

外部リンク

* 中國哲學書電子化計劃《戰國策》：原文を読むことができます。

『戦国策』は、戦国時代の歴史を知る上で欠かせない文献であり、その文章の美しさや登場人物の魅力は、現代の読者をも魅了します。この書物を読むことで、当時の社会や人々の考え方に触れ、歴史への理解を深めることができるでしょう。

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