筑前国続風土記

『筑前国続風土記』は、福岡藩によって編纂された地誌です。元禄元年（1688年）、福岡藩の儒学者である貝原益軒が中心となり、甥の貝原好古や高弟の竹田定直らが編纂に携わりました。元禄16年（1703年）に編纂は完了し、藩主の黒田綱政に献上されましたが、その後も改訂が重ねられ、宝永6年（1709年）に最終的な完成を迎えました。

編纂にあたっては、筑前国内の各地を実際に巡り、実地調査に基づいて詳細な情報が収集されました。この実証的な手法は、後の江戸幕府による諸藩への地誌編纂奨励において、和文の表現や本文の記述方法の手本になったとされています。

江戸時代には、多くの写本が流布しましたが、特に竹田文庫に所蔵されている『筑前国続風土記』は、本編30巻に加え、拾遺として巻31が付属している点が特徴的です。この竹田文庫の写本には、竹田定直による校正だけでなく、他の校正の跡も見られ、定直が編纂に深く関わっていたことが窺えます。清書は福岡藩士の末永為順（虚舟）が担当しました。

文化財としては、竹田家所蔵文書が福岡県指定有形文化財に指定されており、その中には『筑前国続風土記』も含まれています。これらの文書は、一時福岡県文化会館に寄託された後、現在は福岡県立図書館が保管しています。

竹田家は、『筑前国続風土記』の編纂に関わった竹田定直を祖とし、代々福岡藩の藩儒を務めてきた家柄です。そのため、竹田家に伝わる資料は、編纂当時の状況を詳しく知る上で貴重なものです。福岡県立図書館では、竹田文庫の『筑前国続風土記』の原文を公開しており、中村学園大学では活字本の『筑前国続風土記』を閲覧できます。

『筑前国続風土記』は、単なる地誌としてだけでなく、江戸時代の学術的な水準や文化、藩政の実態を知るための重要な史料としても、その価値が認められています。

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