筑摩県

筑摩県：短命に終わった信濃・飛騨の統合県

1871年（明治4年）11月20日、日本の行政区分は大きな変革期を迎えます。それまで存在した信濃国と飛騨国の一部地域を統合し、新たな県が誕生したのです。それが、筑摩県です。

筑摩県は、現在の長野県中信地方と南信地方、そして岐阜県飛騨地方の大部分をその管轄下に置いていました。 信濃国は、府藩県三治制後、14もの藩と旧幕府領から成る伊那県など複数の県に分かれていましたが、第一次府県統合により、北信地方は長野県に統合される一方、南信地方の県と飛騨国高山県が統合されて筑摩県が誕生しました。さらに、旧尾張藩領の木曽地域も編入されています。

県庁は、松本城に置かれ、飯田城と高山陣屋には支庁が設置されました。筑摩県は、その成立から廃止まで、わずか5年間の歴史しか持ちませんでした。その短命な期間にも、幾多の出来事が発生し、激動の時代を反映しています。

筑摩県の歴史：統合と消滅

筑摩県の歴史は、まさに統合と消滅の歴史でした。

明治4年(1871年)11月20日: 信濃国の伊那県、高島県、高遠県、飯田県、松本県、そして飛騨国的高山県、さらに旧尾張藩領の一部が統合され、筑摩県が発足します。
明治5年(1872年): 学制が施行され、筑摩県は第三大区(後に第二大区)に属しました。県内には30大区199小区が置かれ、行政組織が整備されていきます。
明治6年(1873年): 松本城で筑摩県博覧会が開催されます。その収益は松本城の買い戻しや修復に充てられました。これは、県民の文化的・経済的な発展に貢献しただけでなく、松本城という歴史的建造物を保存する上でも大きな役割を果たしました。
明治9年(1876年)6月19日: 不幸な事故が発生します。深夜、筑摩県庁が火災で焼失しました。この出来事は、筑摩県の行政運営に大きな支障をきたしたことは想像に難くありません。
* 明治9年(1876年)8月21日: 第二次府県統合により、筑摩県は廃止されます。信濃国側は長野県に、飛騨国側は岐阜県にそれぞれ編入されました。

筑摩県廃止後の動き：移庁・分県運動

筑摩県の廃止は、ただちに受け入れられたわけではありません。特に長野県側では、県庁所在地問題が発生し、県庁の移転や分県を巡る運動が盛んに行われました。長野県会や県議会には、県庁移転の建議案が計4回も提出されています。さらに、明治時代には、元老院が分県を認める決定をしたこともありましたが、最終的には内務省が認めず、分県は実現しませんでした。 これらの動きは、筑摩県が誕生した背景や、地域住民の強い郷土意識を示すものでした。

筑摩県の行政と歴代知事

筑摩県の行政については、知事の交代や、行政区域の設定などが記録に残されています。知事を務めた人物は、永山盛輝氏と高木惟矩氏の2名です。永山氏は、伊那県参事からの就任で、権令も務めました。高木氏は、筑摩県権参事から参事として就任しています。彼らの治世下、筑摩県は短命ながらもその役割を果たそうと努力しました。

まとめ：筑摩県という歴史の断片

筑摩県は、明治時代の地方行政における短命な存在でした。しかし、その存在は、信濃国と飛騨国という異なる地域が一時的に統合された歴史的事実を物語っています。また、県庁所在地問題や分県運動といった出来事は、当時の地方行政の複雑さと、地域住民の強い地方意識を改めて私たちに示しています。筑摩県という存在は、日本の歴史の一つの断片として、今なお私たちに様々なことを語りかけています。その短い歴史の中に、多くのドラマが秘められていたと言えるでしょう。

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