筒袖

筒袖（つつそで）の概要と歴史

筒袖とは、その名の通り、筒状の形状を持つ袖のデザインを指します。特に日本の伝統的な和服においては、一般的に袂（たもと）がない細い筒袖が主流です。明治時代には西洋の衣服でも筒袖と呼ばれることがありましたが、現在の認識では和服の袖の形態が中心となっています。

筒袖の特徴

主に日本では、筒袖は屋外での労働着として普及してきました。その特徴は袖に袂がなく、身頃に直接縫い付けられている点です。例えば、東北地方の漁村では「筒っぽう」や「つっぽ」と呼ばれる着物が漁師たちによって着用されていました。このように、筒袖は日本の伝統的な文化や衣装に深く根付いています。

現在では、留袖や振袖といった着物の名称が袖の形状に由来しています。また、和裁の分野では大振袖の袂を筒状に仕上げた「大名袖」と呼ばれる仕立てが存在し、特に新生児の神社へのお宮参りに多く用いられるなど、伝統的な格式を保っています。

歴史的背景

筒袖の起源をさかのぼると、4世紀から6世紀後半の山倉古墳群から出土した人物埴輪があり、ここに描かれる装束には長い筒袖が見られます。平安時代の早期には、ほとんどの着物が細い筒袖であったことは埴輪や高松塚古墳の壁画、正倉院の宝物から確認されています。時代が進む中で国風文化の発展や生活スタイルの変化から袖が広がっていく様子が見受けられます。これに対し、鎌倉時代の遺品に見られる装束は身八つ口が縫い付けられており、平安時代の筒袖も大きな形をしていた可能性が指摘されています。

平安時代の後期になると、小袖という庶民の服が登場し、絵巻物では筒袖ではなく袂のあるデザインが見られるようになりました。近世に至ると、炊事婦や船頭、かごかきなどの労働者にとって筒袖は定番の衣服となり、明治時代中期に入ると、教育界でも普及し始めました。

具体的には、明治20年には愛知県知事が小学校生徒に筒袖を推奨し、後に奈良県の師範学校では学生服として「縞木綿筒袖衣」が採用されることに。明治37年には新潟県で女教員の制服が筒袖に決定する等、教育界で一般化していきました。

現代の筒袖

しかし当時の社会において、筒袖は下級労働者の衣服というマイナスのイメージが強く、女子師範学校生徒は「不細工な筒袖」として批判されました。とはいえ、動きやすさや質素であることが評価され、教育の現場では筒袖が続々と採用されていきます。

今日では、筒袖は神社へのお宮参りの晴着や肌襦袢、法被（はっぴ）、作務衣などの形式で見ることができ、今なお日本の文化に根ざした重要な衣服の一部となっています。

まとめ

筒袖は、日本の文化や歴史と深く結びついた特徴的な袖の形状であり、その独自性は時代を越えて評価されています。身近に存在する筒袖の衣服は、古き良き日本の伝統を感じさせる貴重な存在です。

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