管楽セレナード (モーツァルト)

モーツァルトの管楽セレナード第11番と第12番

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは、管楽合奏のために3曲のセレナードを作曲しました。そのうち、第10番は「グラン・パルティータ」という愛称で知られる大編成の作品ですが、第11番と第12番は、当時ウィーンで流行していた「ハルモニームジーク」と呼ばれる、より標準的な編成で書かれています。

ハルモニームジーク

ハルモニームジークとは、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴット各2本という八重奏を基本とする管楽器の合奏形態です。1782年に神聖ローマ皇帝ヨーゼフ2世が宮廷に管楽八重奏団を常設したことをきっかけに、貴族の間でも盛んになり、室内や屋外での様々な機会に演奏されて親しまれました。ハルモニームジークのためには、オリジナルの楽曲だけでなく、オペラやバレエからの編曲も多く作られました。

セレナード第11番 変ホ長調 K.375

この曲は1781年10月に作曲されました。当初はクラリネット、ホルン、ファゴット各2本の六重奏でしたが、翌1782年7月にモーツァルト自身によってオーボエ2本が追加され、八重奏となりました。さらに、イングリッシュホルン2本を加えた稿も存在します。

構成は5楽章で、演奏時間は約24分です。

1. アレグロ・マエストーソ: 変ホ長調、4分の4拍子、ソナタ形式。
2. メヌエット: 変ホ長調、4分の3拍子。
3. アダージョ: 変ホ長調、2分の2拍子。
4. メヌエット: 変ホ長調、4分の3拍子。
5. アレグロ: 変ホ長調、4分の2拍子、ロンド形式。

セレナード第12番 ハ短調 K.388 (384a) 『ナハトムジーク』

この曲は1782年7月に、リヒテンシュタイン侯アロイス1世の楽団の音楽会のために書かれました。「ナハトムジーク」はドイツ語でセレナードを意味します。モーツァルトのセレナードの中で唯一、短調で書かれているのが特徴です。この短調の選択は、当時のモーツァルトがバロック音楽、特にバッハやヘンデルの音楽に傾倒していた影響であると指摘されています。

モーツァルトは1787年に、この曲を弦楽五重奏曲第2番 K.406 (516b) に編曲しています。

構成は4楽章で、演奏時間は約18分です。

1. アレグロ: ハ短調、2分の2拍子、ソナタ形式。
2. アンダンテ: 変ホ長調、8分の3拍子、ソナタ形式。
3. メヌエット・イン・カノーネ: ハ短調、4分の3拍子、カノン形式。
4. アレグロ: ハ短調、4分の2拍子、主題と変奏を含む独特の形式。


これらの2曲のセレナードは、モーツァルトの管楽合奏における卓越した才能を示すとともに、ハルモニームジークという当時の音楽文化を現代に伝える貴重な作品です。

参考文献
作曲家別名曲解説ライブラリー13　モーツァルトI（音楽之友社）

外部リンク
セレナード第11番の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)
* セレナード第12番の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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