簾舞通行屋

簾舞通行屋（みすまいつうこうや）：歴史を今に伝える宿場

簾舞通行屋は、1872年（明治5年）から1884年（明治17年）にかけて、本願寺道路沿いの簾舞（現在の札幌市南区簾舞1条2丁目）で営まれた官営の旅館でした。開拓使によって建てられ、当時の交通網において重要な役割を果たしました。現在では、札幌市指定有形文化財「旧黒岩家住宅（旧簾舞通行屋）」として、簾舞郷土資料館として一般公開されています。

歴史

簾舞通行屋の設立と役割

前年に開通した本願寺道路の宿場として、1872年（明治5年）1月に開拓使によって建てられました。場所は現在の簾舞中学校付近、国道230号が通る場所とされています。福岡県出身の黒岩清五郎が屋守となり、通行人に宿を提供しながら周辺の開拓に取り組みました。当時、平岸村以南や石切り山は未開拓であり、定山渓への道中には休息場所がほとんどありませんでした。そのため、原生林に囲まれた本願寺道路を20km以上歩く旅人にとって、簾舞通行屋は貴重な存在でした。

交通量の減少と通行屋の廃止

しかし、その後開通した札幌本道（国道36号）に交通の主役が移り、本願寺道路の交通量は減少しました。その結果、簾舞通行屋は1884年（明治17年）に廃止されました。しかし、黒岩清五郎はその後もこの地に留まりました。

黒岩家住宅としての再生

明治19年に有珠街道（現在の国道230号旧道）が開通すると、黒岩家は旧屋部分を移築し、馬小屋部分を増築して住居としました。これが現在の黒岩家住宅の原型です。玄関口が二箇所あるのは、この時の増築によるものです。1982年（昭和57年）に黒岩家が新居に移るまで、この家は地域の中心として、役所の出先機関、学校、寄り合い場所としても利用されました。

簾舞郷土資料館としての活用

1984年（昭和59年）に札幌市はこの建物を市の有形文化財に指定し、翌年に通行屋当時の姿に復元・修復しました。1986年（昭和61年）には建物の一部を簾舞郷土資料館として公開し、本願寺道路、通行屋、簾舞の歴史、定山渓鉄道に関する資料を展示しています。管理人を務めるのは、黒岩清五郎の直系の子孫であり、地域の歴史について直接話を聞くことができます。

現状

簾舞通行屋は、豊平川の河岸段丘に位置し、周辺は市街地となっています。建物は簾舞川のそばにあり、西側と北側は簾舞通行屋緑地という小公園として整備されています。かつては定山渓鉄道線が近くを通っており、東簾舞駅からも近かったため、旅館としても利用されていました。現在では、毎年簾舞通行屋まつりが開催され、地域住民に親しまれています。

まとめ

簾舞通行屋は、明治時代の交通と開拓の歴史を今に伝える貴重な遺産です。官営旅館としての役割を終えた後も、黒岩家住宅として地域に貢献し、現在は簾舞郷土資料館として一般公開されています。札幌を訪れる際には、ぜひ立ち寄って、その歴史と文化に触れてみてください。

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