札幌本道

札幌本道：北海道開拓の礎となった道

札幌本道は、明治初期に函館と札幌を結んだ約180kmの馬車用道路であり、北海道開拓の歴史において重要な役割を果たしました。1872年から1873年にかけて開拓使によって建設されたこの道は、日本初の本格的な西洋式馬車道として知られています。

歴史

明治2年（1869年）の開拓使設置に伴い、北海道開発を中央部へ広げるため、札幌に本庁舎が置かれました。これにより、道南と札幌を結ぶ幹線道路の整備が急務となりました。それまで使用されていた道路は不十分であり、明治4年（1871年）に来日した開拓顧問ホーレス・ケプロンは、函館・札幌間の輸送改善を提言しました。

ケプロンの提言を受け、開拓使はアンチセルらに地形・港湾調査を実施させ、札幌本道の開墾を決定しました。函館から森までは道路とし、森からは森蘭航路を経由して室蘭、さらに千歳を経由して札幌の豊平橋までを馬車道で結ぶ計画が採用されました。馬車道は砂利で舗装され、幅は6.7〜13.3メートルでした。

建設資金を確保するため、開拓使は兌換証券250万円を発行しました。開拓次官の黒田清隆が陣頭指揮を執り、道路建設工事のための機構整備が行われました。1872年3月、お雇い外国人の指導のもと函館を起点に工事が開始され、本州や九州から集められた人夫や職人が従事しました。同年7月には函館と森の間約45.2kmの道路が完成し、森と室蘭には埠頭が築かれました。室蘭・札幌間の約223.8kmは冬季の積雪で一時中断しましたが、1873年6月に全線が開通し、札幌本道と命名されました。

開通当初の宿駅は、札幌、千歳、苫小牧、白老、幌別、室蘭、森村、嶺下、中島郷、函館の10駅でした。

開通後

しかし、当時の国内では馬車が普及しておらず、道路は十分に活用されませんでした。札幌への物資輸送は、小樽から石狩川水系を経由する水運が主流でした。札幌農学校教頭のウィリアム・スミス・クラークは、1877年の帰国時にこの道路を通り、後に道路の無駄を批判し、札幌・小樽間の道路改修と鉄道敷設を提言しました。

その後、1885年に札幌本道は国道42号となりました。1907年には国道5号のルートに変更され、1920年に国道4号に改称、1953年には国道5号となりました。札幌本道の室蘭・札幌間の一部は国道から外れ、1952年に国道36号となりました。

海上区間の就航船

* 辛未丸

その他

札幌本道を描いた『新道出来形絵図』という彩色絵が、北海道大学附属図書館に保管されています。

現在

現在、札幌本道の一部は国道5号および国道36号として利用されており、函館市と七飯町にまたがる赤松並木は、2006年に土木学会選奨土木遺産に選出されています。札幌本道は、北海道の発展に貢献した貴重な遺産として、その歴史を今に伝えています。

もう一度検索