米倉守

米倉守は、1938年1月23日に三重県安芸郡河芸町（現在の津市）で生まれ、2008年2月25日にその生涯を閉じました。美術評論家としての活動が広く知られていますが、その背景には、関西学院大学を経て関西大学文学部国文科を卒業後、朝日新聞社に入社し、美術担当記者としての経験が深く関わっています。

朝日新聞社では、大阪本社と東京本社で学芸部の美術担当記者、そして編集委員として活躍しました。この期間に、現代美術の動向を鋭く見つめ、数々の記事を執筆。美術界における独自の視点を培いました。1994年には、多摩美術大学教授に就任し、美術評論家としての知識と経験を活かし、後進の育成に力を注ぎました。また、多摩美術大学では造形表現学部長、松本市美術館長も歴任するなど、教育者、美術館運営者としても手腕を発揮しています。

米倉守は、美術評論家として数多くの著作を残しています。初期の著作には、1983年に発表した『個の創意 現代美術の現場から』や『中村彝 運命の図像』などがあります。また、1986年には『早すぎた夕映 評伝有元利夫』を出版。その後も、『ふたりであること 評伝カミーユ・クローデル』、『人形師与勇輝の肖像』など、美術家や芸術家をテーマにした評論や評伝を数多く発表しています。これらの著作を通して、米倉守は、美術作品の背後にある芸術家の創造性や生き様を深く掘り下げ、読者に新たな視点を提供してきました。

特に、評伝作品においては、芸術家の人生と作品を綿密に調査し、その内面に迫ることで、単なる作品解説にとどまらない深い考察を展開しました。例えば、『早すぎた夕映 評伝有元利夫』では、有元利夫の夭折という悲劇的な運命に焦点を当てながら、その芸術の独自性を深く分析しています。また、『ふたりであること 評伝カミーユ・クローデル』では、ロダンとの関係で知られるカミーユ・クローデルの複雑な内面と、その芸術的才能を詳細に描き出しました。

米倉守の評論活動は、美術作品そのものの分析だけでなく、芸術家の生涯や社会背景まで視野に入れた多角的なものでした。彼の著作は、美術史を学ぶ上で貴重な資料であると同時に、美術作品をより深く理解するための重要な手がかりとなっています。晩年には、美術評論家・東野芳明の評伝執筆中に下咽頭癌のため死去し、その評伝は未完に終わりましたが、その思想と業績は、今日でも多くの人々に影響を与え続けています。著書には、『美の棲家』、『流産した視覚 美の現在・現代の美術』、『非時葉控 脇村義太郎 全人翁の美のものさし』、『夢なら正夢 芸術随想 美の賑はひに誘ふ一〇〇章』などがあります。評論には『魂の果てにしみ入る美学 赤木範陸 - 錬金術師の軌跡 - 展図録』があります。

米倉守は、その評論活動を通して、美術作品の価値を多面的に捉え、読者に新たな美的体験をもたらしました。彼の著作は、美術愛好家だけでなく、芸術に関心を持つすべての人々にとって、重要な指針となるでしょう。

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