米村でんじろう

米村でんじろう（よねむらでんじろう、1955年2月15日 - ）は、日本のサイエンスプロデューサーであり、その活動は多岐にわたります。サイエンスショーの企画・演出、書籍の監修、テレビ番組への出演、実験装置の開発など、科学を身近に感じられるような活動を精力的に行っています。元々は都立高校の物理教師であったという異色の経歴の持ち主です。

生い立ちと教育

千葉県市原市で4人兄弟の末っ子として生まれた米村氏は、兼業農家の家庭で育ちました。高校時代には父親を事故で亡くし、経済的な理由から国立大学を目指すも不合格。2年間の浪人生活を経て、アルバイトを経験した後、東京学芸大学理科B類（物理）に入学しました。大学時代にはパソコンを用いた理科教育ソフトの開発に携わり、指導教官から賞賛を受けたことが自信につながったと述べています。その後、大学院に進学し、1982年に結婚して米村姓となりました。

教師としてのキャリア

大学院卒業後、研究職を志望するも叶わず、東京学芸大学で研究生として過ごした後、自由学園で講師を務めました。自由学園では、教科書にとらわれない自由な授業を展開し、実験を重視した教育を実践しました。その後、1984年に東京都教員採用試験に合格し、1985年から都立稲城高等学校で物理教師として教鞭を執りました。

稲城高校では、生徒たちの学習意欲が低い状況を目の当たりにし、生徒が興味を持てるような授業を模索しました。「百人おどし」のような静電気実験や、野外観察での実験的な授業を取り入れ、生徒たちの関心を惹きつけました。また、当時流行していた超能力ブームを授業に取り入れ、生徒たちに科学的な思考を促す試みも行いました。同時期に、滝川洋二氏と共に「ガリレオ工房」を立ち上げ、実験を通じた教育の普及に尽力しました。

1993年からは都立小金井北高等学校に異動しましたが、進学校であったため実験授業は大学受験に不向きとされ、生徒や保護者からの評判は芳しくありませんでした。しかし、この頃からNHK教育テレビの番組制作に関わるようになり、「やってみようなんでも実験」で自ら実験を披露するようになりました。さらに、科学技術館のサイエンスショーエリアのプロデュースも担当するなど、その活動の幅を広げました。

サイエンスプロデューサーとしての独立

1996年3月、米村氏は都立高校教師を辞職し、サイエンスプロデューサーとして独立しました。同年にNHKで放送されたドキュメンタリー番組「おれは日本のガリレオだ！？」をきっかけに、講演依頼が殺到しました。講演だけでは時間がもたないため、実験を取り入れたところ、次第に実験の比重が増え、現在のサイエンスライブショーのスタイルが確立されました。

[科学]]技術館でのサイエンスショーの実施や、地方からの依頼によるサイエンスライブショーの公演を行い、1998年には「米村でんじろうサイエンスプロダクション」を設立。2004年からは岩手大学で任期付き客員教授を務め、2005年の愛知万博では「日本館わくわくエネルギー教室」を監修するなど、科学の普及に貢献しました。2007年には、国際協力機構]のサポートで[[ケニアの中学校や孤児院で科学実験の授業を行いました。

人物像

サイエンスプロデューサーという肩書きは、米村氏自身が作った造語です。元々裏方の仕事を想定していましたが、結果的に人前に出る仕事が多くなりました。しかし、本人は人前で話すのは得意ではないと感じています。都立高校教師を辞めたのは、学校という枠にとらわれず教育や社会について考えたかったからだと語っています。自身を「ドリフターズが理想」と表現し、科学を「科楽」として楽しむことを重視しています。

実験工作への情熱

幼少期からラジオの分解や電磁石作り、望遠鏡の自作など、工作に夢中になっていました。中学生時代には化学部で火縄銃を自作し、発射実験中に怪我を負った経験もあります。高校時代には廃材で轆轤を作り、壺や茶碗を制作しました。大学時代にはフォルクローレに感動し、ケーナ作りに没頭し、ハンドオカリナをマスターするなど、その探求心は非常に旺盛です。

釣りへの情熱

釣りは米村氏にとって「ほぼ唯一の趣味」です。幼少期には自宅近くの川で魚釣りを楽しみました。教師を辞めてサイエンスプロデューサーになってから釣りに再び目覚め、船舶免許を取得し、船釣りや川釣りを満喫しています。フライフィッシングにも関心を持ち、奥多摩の渓谷で釣りをするほどの熱の入れようです。

主な理科実験

木炭電池

木炭とアルミ箔、食塩水を使った電池で、自由学園での講師時代に考案されました。当初はボルタ電池を試していましたが、高校の化学の教科書からヒントを得て、活性炭電池を開発しました。冷蔵庫の脱臭剤から電池を作れると話した際、生徒から脱臭剤がないと言われたことから、消し炭でも活性炭になることを発見し、リサイクル電池を開発しました。この電池は科学技術庁長官賞を受賞しました。

空気砲

空気の渦輪を発生させる装置で、アメリカでの視察からヒントを得て開発しました。当初は「ボルティックス・リング」や「エア・バズーカ」と呼んでいましたが、ドラえもんの秘密道具から「空気砲」と名付けました。

百人おどし

静電気を使った参加型の実験で、ライデン瓶に静電気を蓄え、手をつないだ人に静電気を流します。都立稲城高校時代に、授業に無関心な生徒たちの興味を引くために始めました。江戸時代の実験を参考に、現代の材料で再現したものです。

ペーパーブーメラン

紙でできたブーメランを投げ、その動きを予想させる授業で使われました。生徒たちが予想を外すことを楽しんでいました。ブーメランの原理を解説する文献が少ないことに疑問を感じ、自ら実験を通して解明しようとしました。

溶けた鉛に指を入れる実験

溶けた鉛にジェル状のアルコールを塗った指を一瞬入れる実験で、ライデンフロスト効果を応用しています。熱が指に伝わらない理由を解説することで、温度と熱について理解を深めることを目指しています。

受賞歴

科学技術庁長官賞（1996年、1998年）

主な著作

多数の書籍や論文を発表しており、子供向けの科学入門書から専門的な解説書まで幅広い分野で活躍しています。

主な出演テレビ番組

ドキュメンタリー番組「おれは日本のガリレオだ！？」や「情熱大陸」など多数。
* レギュラー番組「やってみようなんでも実験」や「でんじろう先生のTHE実験」など多数。

米村でんじろうは、科学を難解なものとしてではなく、誰もが楽しめるエンターテイメントとして伝えることを目指し、その情熱は多くの人々に影響を与え続けています。

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