フォルクローレ

フォルクローレとは

フォルクローレ（folclore）は、日本では主にラテンアメリカ諸国の民族[[音楽]]、またはその影響を受けた大衆音楽を指します。元々は、民俗学や民俗的な伝承全般を意味する言葉で、英語の「folklore」がスペイン語化したものです。民俗学を指す場合は、英語読みの「フォークロア」が使われることもあります。

フォルクローレの概要

ラテンアメリカ各地には、それぞれ独自の特徴を持つフォルクローレ音楽が存在します。共通しているのは、先住民系とスペイン系の音楽的要素が融合している点です。地域によっては、さらに黒人の音楽的要素も加わっています。特に、アンデス山脈周辺の国々、アルゼンチンのパンパ（草原地帯）、パラグアイの音楽がよく知られています。

アンデスのフォルクローレ

ボリビア、ペルー、エクアドルなどのアンデス諸国では、先住民の人口が多く、音楽にも先住民の要素が強く残っています。しかし、現在世界的に知られている「アンデスのフォルクローレ」は、先住民の伝統音楽そのものではなく、スペイン系の音楽的伝統と融合して、1950年代頃に形成された比較的新しい音楽です。アンデス地域はフォルクローレ音楽の中心地とされ、特にボリビアで人気が高いです。代表的な曲には、ペルーの「コンドルは飛んでいく（エル・コンドル・パサ）」やアルゼンチンの「花祭り（ウマウアケーニョ）」などがあります。「コンドルは飛んでいく」は、サイモン&ガーファンクルによるカバーで世界的に有名になりました。

アンデスのフォルクローレは、スペイン系の弦楽器（ギター、チャランゴ、マンドリン、バイオリン、アルパなど）と、先住民系の管楽器（ケーナ、サンポーニャ、ロンダドールなど）、そして両者に起源を持つ打楽器（ボンボなど）が組み合わされて演奏されます。曲調は、1拍子または2拍子のリズムと5音音階（ペンタトニック）を基本とする先住民系の旋律（ワイニョ/ワイノ、トナーダなど）と、6/8拍子のリズムを基本とするスペイン系の旋律（クエッカ、バイレシート、カルナバルなど）の両方を取り入れています。また、伝統にとらわれない新しい曲も多く発表されています。

国によって、曲調、リズム、楽器には多少の違いがあります。例えば、チャランゴはボリビアで最も盛んですが、エクアドルではあまり使われません。逆にロンダドールはエクアドル特有の楽器です。アルパはペルーで最も盛んで、ボリビアやエクアドルではあまり使われませんが、ペルーやエクアドルにもボリビア風のフォルクローレを演奏するグループが多く存在します。

アンデスのフォルクローレは、先住民系とスペイン系の音楽的要素が融合してできた音楽ですが、その原型となった音楽には以下のようなものがあります。

アウトクトナ音楽：インカ時代以前から先住民が受け継いできた音楽。弦楽器を使わず、笛と太鼓の合奏が中心です。伝統的な祭りのための音楽でしたが、近年は商業音楽としても演奏されています。
ノルテ・ポトシの音楽：ポトシ北部地方で演奏される、チャランゴの原型となった弦楽器と独特な奏法が特徴です。
エストゥディアンティーナ：学生が伝統的な衣装でセレナーデを演奏する風習。スペインで生まれ、ラテンアメリカに伝わりました。ボリビアのクエッカやバイレシートなど、白人系のリズムの曲も多く含まれます。

代表的なグループと演奏家

ロス・ハイラス (Los Jairas) ： ボリビア、現代フォルクローレの原型的グループ
ロス・カルカス (Los Kjarkas) ： ボリビア
ハチャ・マリュク (Jacha Malluku) ： ボリビア
ルミリャフタ (Rumillajta) ： ボリビア
スルマ・ユガール (Zulma Yugar) ： ボリビアの歌手
グルーポ・ノルテ・ポトシ (Grupo Norte Potosi) ： ボリビア、北ポトシの演奏スタイル
グルーポ・アイマラ (Grupo Aymara) ： ボリビアのアウトクトナ音楽
ムシカ・デ・マエストロス (Musica de maestros) ： ボリビアのエストゥディアンティーナ
ラウル・ガルシア・サラテ (Raul Garcia Zalate) ： ペルーのフォルクローレギタリスト
クエドラス・デル・ラゴ (Cuedras del lago) ： ペルーのエストゥディアンティーナ
アントニオ・カマケ (Antonio Camaque) ： ペルー、現在は日本で活動
ケルマントゥ (KERUMANTU) ： ペルー、現在は日本で活動
ロス・シャピス (Los Shapis) : ペルー

アルゼンチンのフォルクローレ

日本にアンデスのフォルクローレを最初に紹介したのは、主にアルゼンチンのグループですが、アルゼンチンのフォルクローレは、スペイン系の特徴が強い6/8拍子の音楽が基本です。ガウチョの音楽とリズムが基礎になっています。日本には1960年代に紹介され、アンデスのフォルクローレよりも古い歴史を持ちます。

重要な楽器は、ギターとボンボで、これに歌が加わるだけでも演奏が成り立ちます。バイオリン、マンドリン、アコーディオン、ピアノなどが加わることもあります。アンデスのフォルクローレと比べて、歌のある曲が多く、器楽曲は少なめです。また、踊りの伴奏のための曲が多いのも特徴です。踊りは男女ペアで行われ、馬の足音を模した「サパテオ」と呼ばれる足裁きが取り入れられます。「マランボ」は、この足裁きだけを取り出したアルゼンチン版のタップダンスのようなものです。

現在人気があるのは、北西部の平原地帯に起源を持つ「チャカレーラ(chacarera)」と「サンバ(zamba)」です。また、北東部のリトラル地方に起源を持つ「チャマメ」も特徴的な音楽です。

代表的なグループ、歌手、演奏家

アタウアルパ・ユパンキ (Atahualpa Yupanqui)
メルセデス・ソーサ (Mercedes Sosa)
オラシオ・グァラニー (Horacio Guarani)
エドゥアルド・ファルー (Eduardo Falu)
ロス・カラバハル (Los Carabajal)
ペテコ・カラバハル (Peteco Carabajal)
レオン・ヒエコ (Leon Gieco)
アリエル・ラミレス (Ariel Ramirez) ： ピアニスト、作曲家
クリスティーナとウーゴ (Cristina y Hugo) ： 夫婦デュオ
ペルーサ・タクナウ (Pelusa Tacunau)

チリのフォルクローレ

チリもアルゼンチンと同様に、スペイン系の影響が強い国です。特に、舞曲のクエッカとトナーダが盛んに演奏されます。1960年代後半からは、ビクトル・ハラなどのヌエバ・カンシオン（新しい歌）が、社会変革を目指す音楽として注目を集めました。この流れの中で、ボリビアの音楽も紹介され、アンデスのフォルクローレやチャランゴ、ケーナなども一般的になっています。

代表的なグループ、歌手、演奏家

ビクトル・ハラ (Victor Jara)
ビオレータ・パラ (Violeta Parra)
インティ・イリマニ (Inti-illimani)
キラパジュン (Quilapayun)
イジャプ (Illapu)

パラグアイのフォルクローレ

パラグアイは、先住民のグァラニー人が多く住んでいますが、音楽的特徴はスペイン系の影響が強いです。アルゼンチンのリトラル地方と隣接しているため、音楽的な特徴も似ています。アルパ（民族的なハープ）とギターによる合奏が特徴的です。

代表的な音楽家

アグスティン・ピオ・バリオス
ホセ・アスンシオン・フロレス ： 作曲家
フェリックス・ペレス・カルドーソ ： アルパ奏者
アパリシオ・ゴンサレス ： アルパ奏者

関連項目

フォークロア
ヌエバ・カンシオン
コスキン・エン・ハポン
フォークソング
インカ帝国の成立（フォルクローレ音楽が使用されているコミックソング）
カントゥ・フォルクローレ連酩
織田哲郎
ボクの背中には羽根がある
碧いうさぎ

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