米欧回覧実記

『米欧回覧実記』についての詳細

『米欧回覧実記』（べいおうかいらんじっき）は、岩倉使節団による西洋文明の見聞を記録した重要な報告書です。正式名称は『特命全権大使 米欧回覧実記』で、その内容は政治、経済、産業、軍事、教育、文化、社会、風俗など多岐にわたり、明治時代初期の国際情勢や西洋文明の実態を伝える貴重な資料となっています。この書物は、1871年から1873年にかけての実際の視察や経験を基に編纂され、19世紀の百科事典的な役割を果たしています。

使節団の構成と訪問期間

使節団は、岩倉具視を中心に、明治新政府の主要なメンバーや随行者たちを含む46名で編成されました。使節団は、1871年11月から1873年までの約1年9か月にわたり、アメリカやヨーロッパの条約締結国を訪問し、その経験を通じて国を豊かにする手立てを模索しました。

書かれた経緯と構成

『米欧回覧実記』は、使節団の書記官である久米邦武によって編纂され、1878年に刊行されました。その形式は、全100巻から成る豪華な装丁とし、内容は当初の予定を超えて幅広い分野を網羅しています。本書には、使用されている漢字や片仮名が交じった文学的なスタイルの記述が印象的であり、美術作品としても価値のある300余枚の銅版画が添えられています。これにより、書物は単なる文献を超えた視覚的な資料としても親しまれています。

目的と公共性

岩倉具視は、使節団の活動を国民に広く知らしめるという観点から、久米を随行記者として参加させ、その情報を整理して報告書としてまとめることを命じました。このような企画には、各国の文化や産業の進展を理解し、それを日本の近代国家形成に役立てようとする意図がありました。

各国の訪問と観察

『米欧回覧実記』は、訪れた国ごとに詳細に記述されており、地理、気候、歴史、文化、政治、産業、経済などの情報がまとめられています。それに加えて、訪問先の小中学校や大学の視察、公共施設の見学、産業工場の詳細な観察などが紹介され、当時の西洋の実態をリアルに描写しています。これにより、日本が直面していた近代化の課題や、国際社会との関わり方についての洞察を得ることができる貴重な文献となっています。

影響と評価

本書は、明治政府の近代化政策に多大な影響を与えたとされ、特に欧米の制度や文化を理解し、それを日本に取り入れるためのベースを築く役割を果たしました。その後の日本の政策や文化において、本書の見解や情報は重要な指針となり、現代においても研究足り得る価値を持っています。

出版と再評価

初版は1878年に刊行され、その後は多くの版が発行されました。特に1970年代から1980年代にかけての岩波文庫版の再発行によって、現代でも多くの読者に親しまれています。

結論

『米欧回覧実記』は、岩倉使節団が果たした役割や当時の西洋文明の姿を知るための最も重要な資料として、歴史研究や近代化論争におけるキーワードの一つとされています。日本の幕末から明治初期にかけての国際的な交流が、どのように国に影響を与えたかを理解するために、欠かせない書物と言えるでしょう。

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