籾井勝人

福岡県出身の実業家です。三井物産でキャリアを積んだ後、日本ユニシスの社長を経て、第21代NHK会長を務めました。バドミントン関連の組織でも要職を歴任しています。

生涯とキャリア

1943年、福岡県嘉穂郡山田町（現在の嘉麻市）に生まれました。実家は「籾井鉱業」を営んでいました。九州大学経済学部を卒業後、1965年に三井物産に入社。主に鉄鋼畑を進み、取締役、専務取締役、副社長を歴任しました。特に、米州監督兼米国三井物産社長として2年間勤務しました。

2005年、三井物産を離れ、日本ユニシスの代表取締役社長に就任。約6年間トップを務め、マスコミ向けの世論調査事業を展開しましたが、この部門は日本世論調査協会には加盟していませんでした。社長退任後も相談役、特別顧問を務めました。

2014年1月25日から2017年1月24日まで、第2次・第3次安倍内閣期にNHK会長を務めました。仕事上のつながりがあったNHK経営委員の推薦を受け、経営委員会で選出されました。会長就任に伴い、日本ユニシスでの役職は全て退任。また、内閣府中央防災会議委員にも任命されました。

その他、アジアバドミントン連盟会長や日本バドミントン協会副会長、日本小学生バドミントン連盟会長を歴任しました。アジアバドミントン連盟会長は2013年に解任されています。

人物像

趣味はゴルフと小唄。座右の銘は「蓋棺事定」（人間の評価は死後に定まるという意）です。家族は妻と二女。長女は文部科学省の官僚で、日本オリンピック委員会（JOC）常務理事も務めています。

NHK会長としての論争

籾井氏のNHK会長在任期間は、様々な発言や行動が論争を呼びました。

就任記者会見での発言: 会長就任記者会見で、「個人として」と前置きしつつ、特定秘密保護法について「通っちゃったんで、言ってもしょうがない」、尖閣諸島・竹島問題などに関し「政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」、慰安婦問題について「戦争をしているどこの国にもあった」などと発言。これらの発言は国内外で大きな波紋を呼び、後に「取り消したい」「申し上げたことは取り消したが、考えは取り消していない」などと釈明しました。
発言への反応: 菅義偉官房長官（当時）や橋下徹大阪市長（当時）は、発言に理解を示したり擁護したりする一方、民主党や共産党、社民党などの野党は厳しく批判しました。自民党内にも慎重な意見がありました。日本マスコミ文化情報労組会議やアムネスティ・インターナショナル日本支部は辞任を求め、元NHK職員有志も経営委員会に罷免を申し入れるなど、広範な反応が見られました。
韓国でも批判的な報道がなされ、与野党から「妄言」「無知の極み」といった非難が出ました。
視聴者の反応: 会長辞任を求める意見が多数寄せられ、受信料支払いの拒否や凍結運動なども発生しました。
ハイヤー問題: 私的なゴルフにおけるハイヤー代の支払いに関する問題が発覚。当初NHKが費用を負担しましたが、後に本人が返還しました。監査委員会は事務処理のずさんさを指摘し、本人や関係者の責任に言及しました。
差別用語の使用: 国会答弁において、聴覚障害者に対する不適切な差別用語を複数回使用し、その都度謝罪・撤回しました。
国会での発言: 参議院総務委員会で野党の質問を「文句」と表現し、後に謝罪しました。
* 原発報道への指示: 熊本地震発生時の災害対策本部会議で、原発関連報道について「政府の公式発表をベースに伝えること」と指示したことが明らかになり、報道の自主自律を損なう懸念が示されました。

人事への関与

NHK会長就任直後に理事全員に日付のない辞表の提出を求めたと報じられ、「モミジョンウン」と揶揄するニックネームがつけられました。これは人事権を掌握し独裁的な立場にあるとの批判を招きました。経済界からも、企業統治の観点や商習慣との違いから疑問視する声が上がりました。籾井氏自身は、辞表提出の事実を認めつつも、「覚悟を示すためであり、脅す意図はない」「一般社会ではよくある」と釈明しましたが、前職の日本ユニシスでは行っていなかったと述べています。

退任

2017年1月24日、任期満了により退任しました。最後の記者会見では、「まっすぐな生き方を貫けた」と述べましたが、受信料引き下げを実現できなかったことを残念だと語りました。受信料引き下げは、後任の上田良一氏のもとで後に実現しました。

実業家から公共放送のトップへ転じ、様々な物議を醸した人物として、籾井勝人はその特異な経歴とともに記憶されています。

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