粗糖

粗糖（そとう）

粗糖は、砂糖の種類の一つであり、特にサトウキビを由来とする場合に「原料糖」とも称される含蜜糖です。これは、後に多様な種類の砂糖へと生まれ変わる「精製糖」を製造する上での基本的な原材料となります。

製法

粗糖の製造工程は、黒砂糖を作る過程と途中まで共通しています。まず、サトウキビから絞り出された汁を、不要な成分を取り除くための下処理（清澄化）を施します。次に、この清澄化された汁を煮詰めて濃縮し、砂糖の結晶を析出させます。結晶が十分形成された後、遠心分離機にかけることで、結晶と液状の糖蜜（モラセス）をある程度分離します。このようにして糖蜜を部分的に取り除いて残った結晶が粗糖となります。

用途と流通

粗糖の主要な役割は、一般的に食卓に並ぶ白砂糖やグラニュー糖といった精製糖の原料となることです。製糖工場において、粗糖はさらに高度な精製工程を経て、純度の高い様々な砂糖製品へと加工されます。このため、粗糖は国際的に広く取引されており、その価格は商品先物取引の対象にもなるほど、世界の食品産業にとって重要な農産物および原材料となっています。

形態と消費者向け商品

粗糖は用途に応じて様々な結晶サイズで作られますが、特に国際輸送を前提とした大量の粗糖は、取り扱いやすいように比較的大きな結晶として製造されることが多いです。この粒の大きな粗糖は、一部がそのまま「赤ザラメ」として消費市場にも流通しています。一方、結晶が細かい粗糖も存在し、これらは「赤砂糖」や「ブラウンシュガー」といった商品名で販売されることがあります。

これらの消費者向け商品は、完全に糖蜜が取り除かれた精製糖とは異なり、製造工程で糖蜜が意図的に、あるいは完全に分離されずに残っているため、独特の色合い（褐色）と風味、そしてコクを持っています。中双糖や三温糖といった日本の含蜜糖と似た甘味料として使用されますが、残存する糖蜜由来の風味が比較的に強く、黒砂糖に近い個性的な味わいがあることから、煮物や照り焼きなど、料理に深みや香ばしさを加えたい場合に特に適しています。

テンサイ由来の場合

サトウキビと並んで砂糖の主要な原料であるテンサイ（サトウダイコン）から砂糖を作る場合、通常はサトウキビのような粗糖の形態を経ることは稀です。テンサイ由来の糖分は、抽出後に高度な精製工程を経て直接最終的な砂糖製品となることが一般的です。しかし、例外的に、テンサイから得られたシロップを用いて、あえて糖蜜を部分的に残した粗糖のような形態で製品化し、自然食品として販売しているメーカーも存在します。

日本国内の類似流通商品

日本国内で「きび砂糖」や「さとうきび糖」といった名称で一般的に販売されている商品の多くは、厳密には精製糖の原料としての粗糖そのものではありませんが、製法や成分において粗糖に近い、糖蜜を完全に除去していない含蜜糖に分類されます。これらの商品は、サトウキビ由来の風味やミネラル分を生かしており、特定の産地のサトウキビを原料としたものや、黒糖などをブレンドして風味豊かに仕上げたものなど、多様なバリエーションがあります。これらの商品は、家庭での料理や菓子作り、飲み物など、幅広い用途で利用されています。

（※特定の商品名は、メーカーや時期によって変更される可能性があります。）

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