粟巣野スキー場

富山県富山市本宮にある粟巣野スキー場は、地元のNPO法人「あわすの」によって運営されているスキー場です。親しみを込めて「あわすのスキー場」とも呼ばれています。

この地は、昭和初期から富山県におけるスキー競技の黎明期を支える重要な拠点の一つでした。明治神宮大会スキー競技の予選会場や、北信五県中学校スキー大会など、数々の競技会がここで開催され、西部に位置する立野原スキー場と並んで、県内のスキー振興に大きく貢献した場所として歴史に名を刻んでいます。

近代的なスキー場としての始まりは、1960年に粟巣野観光開発株式会社が設立されたことに遡ります。同年12月20日に施設が完成し、12月25日に華々しくオープンしました。時代が進むにつれて、スキー場の設備やサービスも拡充され、1982年には北陸地方で初めて滑降タイム測定器「タイム・チャレンジャー」が導入され、競技志向のスキーヤーからも注目を集めました。また、ウィンタースポーツの多様化にも対応し、1990年にはスノーボードが解禁されています。1997年には、第26回全国障害者スキー大会の会場となるなど、重要なイベントも開催されました。

運営体制は2002年10月1日に大きな転換期を迎え、粟巣野観光開発株式会社からNPO法人「あわすの」へと引き継がれました。しかし、近年は雪不足による経営悪化が深刻化し、事業の継続が困難な状況に陥ります。2020年6月16日、運営主体である「あわすの」は総会で解散を決定。約3千万円の負債を抱え、新たな運営者が現れなければスキー場の存続は危ぶまれる状況でした。この危機に対し、スキー場を愛する人々が立ち上がります。同年7月、「あわすのスキー場の復活を支援する会」が結成され、夏の草刈りや署名活動といった地道な支援活動が始まりました。この熱意が実を結び、「あわすの」は債権者との間で債務の大幅な減免について合意。これにより、閉鎖の危機を乗り越え、スキー場は存続することが決定しました。

粟巣野スキー場の大きな特色は、宮城県のスキー場と並んで、NPO法人による運営の草分け的存在である点です。リフトなどの設備は従来の事業者が所有する「上下分離方式」を採用し、ゲレンデの整備や維持には多くのボランティアが参加しています。シーズン前の草刈りや、コース拡張のための伐採作業なども、地域や愛好者の手によって行われています。

ゲレンデは北向き斜面のため、雪質が良いことで知られています。また、隣接する立山山麓スキー場群からはやや離れて位置しているため、比較的混雑が少なく、落ち着いて滑走できる穴場的な存在です。コースは初級者から上級者まで対応しており、特にリフト待ちの時間が少ないことや、リフト券、特にシーズン券が格安であることから、集中的に技術向上を目指す練習熱心なスキーヤーから高い評価を得ています。全長約3,000mのクロスカントリーコースも整備されています。

コースレイアウトとしては、ダイナミックコースとファミリーコースを組み合わせることで、最長約1,200mのロングクルージングを楽しむことができます。ゲレンデ下部には、小さなお子様でも安心して楽しめるキッズパークが設けられており、ベルトコンベア式の登坂装置が導入されています。

スキー場施設としては、多目的センター「ミレット」があり、食堂や無料休憩所、売店、更衣室、リフト券売り場といった主要な機能が集約されています。その他、スキーヤー向けのレンタルショップやスクール（スキーのみ開講）も利用可能です。駐車場は450台分が無料で提供されています。

かつて、スキー場へのアクセスには、現在廃駅となった富山地方鉄道の粟巣野駅からスキー場を結ぶ上山用のチェアリフトが存在しました。これはスキー場開業と同じ1960年12月20日に設置された一人乗りのリフトでした。当時のアクセス道路は、一つ手前の本宮駅から長い坂道を上り、極楽坂スキー場を経由するルートしかなかったため、電車利用者にとってはこのチェアリフトが最も早くスキー場に到達できる唯一の手段でした。しかし、1977年に立山駅から現在のらいちょうバレースキー場（当時は県営ゴンドラスキー場）へのアクセス道路建設が始まったことに伴い、このチェアリフトは廃止・撤去されました。

現在の交通アクセスとしては、車の場合、北陸自動車道の立山インターチェンジから約40分で到着します。公共交通機関を利用する場合は、富山地方鉄道立山線の立山駅から出ているバスで約10分です。かつては1981年まで富山地方鉄道の粟巣野駅が最寄り駅でした。

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