チェアリフト

チェアリフトは、山岳地やスキー場などで見られる、人々を運ぶための索道の一種です。鋼製のケーブル（索）に一定間隔で椅子が取り付けられており、乗客はそれに乗って移動します。主にスキー場で利用されますが、遊園地や観光施設、都市交通としても活用され始めています。

概要

一般的にチェアリフトは、起点と終点の停留場の間に張られた支曳索に、椅子が固定された状態で循環する索道です。これに対し、ゴンドラリフトやデタッチャブルリフトといった自動循環式もあります。自動循環式は、駅で椅子がケーブルから離れ、低速で乗降できるのが特徴です。

旅客用ロープウェイは非常に高速で、秒速12mに達することがありますが、従来の2人乗りチェアリフトは秒速2.3mで1時間あたり約1,200人を運ぶことができます。自動循環式4人乗りチェアリフトは、秒速5mで1時間あたり約2,400人を輸送できます。いずれのリフトも天候に合わせて速度調整が可能です。

ほとんどの場合、乗降は始点と終点でのみ行われますが、一部には途中で乗降できるリフトもあります。支曳索の構造上、始点から終点までは直線でなければなりません。高速リフトで進行方向が変わる場合は、2つのリフトをレールなどの機構で繋ぐことで実現しています。

自動循環式は、固定循環式に比べて高速で運行でき、乗降時には低速で安全に乗降できます。スキー場では、自動循環式リフトは「高速リフト」と呼ばれることが多いです。しかし、過去には握索装置の不具合による事故も発生しており、安全管理が重要です。

また、滑走式リフトと呼ばれる、ロープを直接掴む、または搬器に跨ることで移動するリフトも存在します。

歴史

人間用の索道は、アジアでは1600年代以前から山岳地帯で利用されていました。当初は人力でロープを掴んで渡るものでしたが、その後、貨物運搬用のハーネスやかごが改良されました。

記録に残る最初の機械式索道は、1616年にヴェネツィアのファウスト・ヴランチッチによって設計された複線式旅客用のものでした。実用的なシステムは、1644年にオランダのウィーブ・アダムによって建設されたとされています。この技術はヨーロッパのアルプス地方で発展し、鋼索と電気駆動装置の登場により急速に進歩しました。第一次世界大戦中は、軍事用索道が積極的に利用されました。

最初のスキーリフトは、1936年にアメリカ・アイダホ州のサンバレー・スキー場に設置されました。このチェアリフトは、ユニオン・パシフィック鉄道のジェームズ・カランによって開発されたもので、バナナ輸送システムを応用したものでした。カランの設計は現在のチェアリフトにも受け継がれています。最初のスキーリフトの特許は、1939年にカランらによって取得されました。このプロジェクトは、サンバレーの創設者であるW・アヴェレル・ハリマンが資金援助しました。オリジナルの1936年のリフトは、後にミシガン州に移設され、現在も部品が使用されています。

世界で2番目のチェアリフトは、1938年にオレゴン州に設置されたリブレット社の「マジック・マイル」です。ヨーロッパでは1940年にチェコに最初のチェアリフトが建設されました。

日本初のチェアリフトは、1946年に北海道札幌市の藻岩山に設置されましたが、現存していません。民間用としては、1948年に群馬県の草津国際スキー場に、1950年には新潟県の赤倉中央スキー場と池の平カヤバスキー場に設置されました。

リフトの発展

スキーブームに伴いリフトが増加するにつれ、事故も増加しました。そのため、安全対策が強化され、搬器の大型化、手動・自動の安全バー、フットレスト、フードなどが開発されました。2018年には、ゴンドラとリフトが同一索道上にある混合型リフトが初めて導入されました。

構造

チェアリフトの主な構造は、索道と同様です。ここでは、索道に記述のない部分について説明します。

起点・終点停留場

原動装置: 支曳索の動力源で、モーターが使用されることが多いです。非常用としてディーゼルエンジンが備え付けられている場合もあります。
緊張装置: 支曳索の張力を調整する装置です。固定式と自動調整式があります。
折返装置（滑車）: 支曳索を折り返すための滑車です。一方は原動装置に接続されています。
建屋: 風雪から乗客や停留場を保護するために設置されます。自動循環式リフトの場合は、営業期間外の搬器格納庫も併設されることがあります。
ローディングカーペット: 乗車を補助するためのベルトコンベアです。リフトの接近に合わせて動くタイプと常時動いているタイプがあります。

その他、座面に雪が積もらないように、ブラシや圧縮空気噴出装置が設置されていることがあります。

支柱

支曳索を支えるための鉄塔です。支曳索を支持する滑車連、脱索検出装置、作業台、風速計、監視カメラなどが取り付けられています。支柱は一定間隔で設置され、負荷に応じて滑車の数が増えます。

初期の滑車は鋼鉄製でしたが、騒音を軽減するためにゴムが巻かれたものが使われています。初期の支柱はトラス構造でしたが、現在は円筒形や方錐形が主流です。

搬器

初期のチェアリフトには屋根付きのものがありましたが、現在はフード付きが主流です。座面は木板やプラスチックから、防寒シート付きのものに改良されました。セイフティーバー付きの搬器では、定員に応じた仕切りが設けられています。

チェアリフトの設備寿命は長く、支柱は30～50年程度ですが、支曳索は消耗品であり、定期的な交換が必要です。しかし、スキー人口の減少により、維持費が捻出できずに廃止されるケースが増えています。

乗車定員による区分

チェアリフトには、1人乗りから8人乗りまで様々な種類があります。定員以下の人数でも乗車できますが、混雑時には相乗りを求められることがあります。特に1人客向けのレーンが設けられている場合もあります。

シングルリフト

1人乗りのチェアリフトで、背もたれや手すりが小さく、座面だけのものもあります。降車時に戸惑う初心者もいますが、一部には降車が楽なタイプもあります。近年では数が減少しています。

ペアリフト

2人乗りのチェアリフトで、日本のスキー場で最も多く見られるタイプです。「ロマンスリフト」とも呼ばれます。ほとんどが固定循環式ですが、一部には自動循環式もあります。

トリプルリフト

3人乗りのチェアリフトです。セイフティーバー付きのものもあります。一時期多く設置されましたが、クワッドリフトの登場により新設は少なくなりました。

クワッドリフト

4人乗りのチェアリフトで、輸送力が高く、高速リフトである場合が多いです。フード付きのものもあり、快適な移動が可能です。

6人乗りリフト

6人乗りのチェアリフトで、自動循環式を採用しています。日本でも設置箇所が増えており、海外では「シックスパック」と呼ばれています。

8人乗りリフト

8人乗りのチェアリフトで、自動循環式を採用しています。日本ではまだ設置例はありませんが、海外では「エイトパック」と呼ばれています。

安全に関する事項

チェアリフト利用時の注意

日本鋼索交通協会と全日本スキー連盟が定める安全対策協議会では、以下の条文が定められています。

乗車中:
イスを揺さぶらない
イスから飛び降りない
降車時:
降りそこないに注意する

これらの条文は、脱索や事故を防ぐために非常に重要です。リフト乗り場には注意事項が表示されており、揺さぶりや飛び降りの禁止はリフト支柱にも標識で示されています。

その他の禁止事項

降車停留場における、折返装置部分での回り込み: 危険なので禁止されています。
リフト下の立ち入り禁止: 遭難や障害物との衝突の危険があるため、禁止されています。

事故

逆走: 過去には海外で、リフトが高速で逆走し、乗客が負傷する事故が発生しています。日本国内では、法規制により逆走防止構造が義務付けられているため、そのような事故の報告例はありません。
その他の事故: 日本国内でも、リフトの部品破損による落下事故などが報告されています。

安全装置

脱索検知装置: 脱索を検知してリフトを自動停止させます。
風速計・風向風速計: 強風時にリフトを減速・停止させます。
係員詰め所: 係員が常駐し、乗降時の安全を監視します。
緊急停止スイッチ・減速スイッチ: 緊急時にリフトを停止させます。
緊急停止装置: 乗り過ごした乗客が作動させることで、リフトを停止させます。
落下防止対策: リフト下は立ち入り禁止とし、落下防止網やフェンスなどを設置します。
監視カメラ: リフト中間の異常を発見するために設置される場合があります。

脚注

関連項目

索道
搬器
日本の索道

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