系 (自然科学)

自然科学における系

自然科学において、「系」とは、研究対象として注目する自然界の一部を指します。対象とする範囲は研究分野や目的に応じて異なり、「力学系」、「生態系」、「太陽系」、「実験系」など、様々な表現が用いられます。系以外の部分は「外界」と呼ばれ、系に影響を与える可能性がありますが、系の大きさに比べて外界は非常に大きいため、系から外界への影響は無視できるという前提で考察を進めるのが一般的です。外界の状態は一定である、もしくは単純な変化をする、といった仮定が置かれることも多く、観測者自身も通常は外界に位置付けられます。

物理学における系

物理学では、系の記述方法によって分類されます。古典力学を用いて記述される系は「古典系」、量子力学を用いて記述される系は「量子系」と呼ばれます。

熱力学における系の分類

熱力学では、系と外界の間で許されるエネルギーの移動形態に基づいて系を分類します。熱力学において重要なエネルギー移動の形態は、「仕事」、「熱」、そして「物質移動」に伴うエネルギー移動です。「仕事」はピストンとシリンダーの系のような力と変位の積として表される機械的な仕事だけでなく、電気的なエネルギー移動など、熱力学以外の方法でも考察可能なエネルギー移動を含みます。「物質移動」とは、ガソリンエンジンの燃焼室へのガソリンと空気の吸入や排気のように、物質の移動に伴うエネルギー移動のことです。ガソリンのような燃料は化学エネルギーを内包しており、燃焼によって放出されます。これはエネルギーの流入に相当します。

燃焼のような急激な化学反応に限らず、部屋の換気のように、温度や湿度が異なる空気の交換でもエネルギー移動が発生します。

外界との物質移動を許す系を「開放系」、物質移動を許さない系を「閉鎖系」と呼びます。閉鎖系の中で、熱によるエネルギー移動も許さない系を「断熱系」、さらに仕事によるエネルギー移動も許さない系、つまりあらゆるエネルギー移動を許さない系を「孤立系」と呼びます。

これらの系では、それぞれの制限に応じた法則が成り立ちます。孤立系ではエネルギー保存則、断熱系ではエントロピー増大則、閉鎖系では質量保存則が成り立ちます。熱を交換する外界は「熱浴」、質量を交換する外界は「粒子浴」と呼ばれます。

系の具体例

系は、容器に詰められた気体、特定の溶液、力を受けた物体、細胞内、機関内など、様々なものを対象とします。

開放系の例

栓のしまっていないフラスコ
細胞内の環境

閉鎖系の例

大きな水槽に沈めた、栓の閉まったフラスコ
温室
特定の力のみを外界と受けたり与えたりする物体

断熱系の例

断熱材で覆われたフラスコ

これらの分類は、理想的なモデルであり、現実の系は厳密にはこれらのいずれかに完全に分類されることは稀です。しかし、これらの概念は、複雑な自然現象を理解するための重要な枠組みとなります。

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