紀信

紀信（き しん）

紀信は、中国の秦末から漢初の時代に活躍した武将です。生没年は定かではありませんが、劉邦に仕え、その忠義ぶりで歴史に名を残しました。

生涯

紀信は、劉邦がまだ勢力を拡大する以前からその側近として仕えていました。紀元前207年、劉邦と項羽が会見した「鴻門の会」では、樊噲、夏侯嬰、靳彊らと共に参軍として劉邦を護衛し、危険から守り抜きました。

紀信の最も有名な功績は、紀元前204年の「滎陽の戦い」におけるものです。当時、劉邦は項羽率いる10万の大軍に滎陽城を包囲され、兵糧も尽きかけ、落城寸前の危機に瀕していました。この状況を打開するため、陳平は劉邦に策を献じます。それは、紀信が劉邦に扮して楚軍に降伏するふりをし、その隙に劉邦本人が脱出するというものでした（金蝉脱殻の計）。

紀信はこの決死の策を受け入れ、劉邦は陳平ら数十騎と共に滎陽城を脱出しました。紀信は劉邦の身代わりとなり、項羽の前に進み出ます。項羽は紀信が劉邦でないことを見破りますが、それでも紀信の勇気と忠義に感銘を受けました。しかし、最終的に紀信は項羽によって火刑に処されるという悲劇的な最期を遂げました。

死後

紀信の忠義は後世に高く評価され、宋代には忠佑安漢公、元代には輔徳顕忠済王、明代には忠烈侯といった諡号が贈られています。彼の勇気ある行動は、劉邦の漢王朝樹立に大きく貢献し、人々に語り継がれる英雄となりました。

紀信の故事は、忠義を重んじる中国の伝統的な価値観を象徴するものとして、現在でも広く知られています。

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