紀元前204年

紀元前204年は、古代世界において重要な出来事が数多く発生した年です。この年は、特に地中海世界における勢力争いと、中国における内乱が際立っていました。

地中海世界

カルタゴ

カルタゴでは、将軍ハスドルバル・ギスコが、ヌミディア王マシニッサとの同盟を解消し、新たな同盟者として別のヌミディア王シュファクスを選びました。これは、ローマとの戦いにおける勢力図の変化を示唆しています。ローマ軍はスキピオ・アフリカヌスに率いられ、カルタゴの都市ウティカを包囲しましたが、ハスドルバルとシュファクスの連合軍の抵抗により、攻め落とすことはできませんでした。

エジプト

エジプトでは、プトレマイオス4世の死後、後継者争いが勃発しました。首相ソシビウスらは、プトレマイオス5世の母であるアルシノエ3世の報復を恐れ、プトレマイオス4世の死を隠蔽しました。さらに、アルシノエ3世を暗殺し、わずか5歳のプトレマイオス5世がソシビウスの後見のもとで王位に就きました。アルシノエ3世は国民から人気が高かったため、この暗殺は国内で大規模な暴動を引き起こしました。この事件は、プトレマイオス朝の不安定さを露呈させました。

ローマ帝国

イタリア半島では、ハンニバル率いるカルタゴ軍と、プブリウス・センプロニウス・トゥディタヌス率いるローマ軍がクロトンの戦いで激突しましたが、勝敗は決しませんでした。この戦いは、第二次ポエニ戦争の戦況が膠着状態にあることを示しています。

セレウコス朝

セレウコス朝では、アンティオコス3世がマケドニア王ピリッポス5世と会談し、エジプトの弱体化に乗じて領土を分割する密約を交わしました。この密約により、アンティオコス3世はシリア南部、リュキア、キリキア、キプロスを、ピリッポス5世はアナトリア半島西部とキクラデス諸島を獲得することになりました。この動きは、地中海における新たな勢力均衡の始まりを示す出来事でした。

中国

前漢

中国では、楚漢戦争が激化していました。項羽が劉邦を滎陽に追い込みましたが、劉邦は辛うじて滎陽から脱出しました。この戦いは、後の漢王朝の成立に繋がる重要な局面でした。

その他の出来事

この年は、干支で丁酉にあたります。
日本では、孝元天皇11年にあたります。
仏滅紀元では341年にあたります。

誕生

この年に生まれた人物の記録はありません。

死去

アルシノエ3世：エジプトの女王で、プトレマイオス4世の姉であり后（紀元前246年/紀元前245年生まれ）。
魏豹：中国の戦国時代後期から秦代にかけての政治家で魏王室の一族。
共敖：秦末の群雄。
陳余：秦末から前漢初期にかけての武将及び代王。
范増：秦末期の楚の軍師。
* 酈食其：中国秦から楚漢戦争期の儒者、説客（紀元前268年生まれ）。


紀元前204年は、各地で激しい戦いや権力闘争が繰り広げられた激動の年でした。これらの出来事は、後の歴史の流れを大きく左右することになりました。

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