紀元前40世紀

紀元前40世紀：世界各地で歴史が動き出す

紀元前40世紀（紀元前4000年から紀元前3901年）は、地球規模で気候変動や文化変容が著しく見られた時代でした。現代よりも温暖で湿潤な気候が世界的に広がり、気温は平均で1～2℃高かったと推測されています。この温暖化は、完新世海進（後氷期海進）のピークと重なり、日本列島では縄文海進（有楽町海進）として知られる海水準の上昇を引き起こしました。

この時代の環境変化は、世界各地の地形や生態系に大きな影響を与えました。東南アジアでは、スンダランドやサフルランドといった陸地が水没し、海岸線は大きく変化しました。一方、アフリカではサハラ砂漠が乾燥化し、砂漠へと姿を変え始めました。

こうした環境変化を背景に、世界各地では様々な文化が興隆していきました。西アジア・地中海東岸地域では青銅器時代が始まり、メソポタミアの肥沃な三日月地帯では、灌漑農業を基盤とした高度な文明が発展しました。この地域における文明の発展は、後の世界史に大きな影響を与えることになります。

サハラ砂漠では、タッシリ・ナジェール遺跡の壁画が、この時代の社会変容を物語っています。「狩猟民の時代」から「牛の時代」への移行期を表すこれらの壁画は、気候変化に伴う生活様式の変化を視覚的に示しています。「白い巨人」と呼ばれる象徴的な人物像は、この時代の精神文化の一端を垣間見せてくれます。

エジプトでは、上エジプト地域でバダリ文化からナカダ文化I期（アムラー期）への移行が見られます。これは、社会組織や文化様式の変化を示す重要な出来事です。地中海西部では、サルデーニャ島でヌラーゲ時代以前のオツィエリ文化が栄え、モンテ・ダッコディ遺跡などがその代表例として知られています。

ユーラシア大陸東部では、タジキスタンにサラズム原始都市遺跡が形成され、「女王の墓」と呼ばれる建造物が築かれました。また、ロシア沿海州南西部ではシニ・ガイ文化が形成されました。中国では、黄河上中流域で仰韶文化廟底溝期、黄河下流域で大汶口文化、長江下流域で馬家浜文化から崧沢文化への移行が見られ、珠江流域では洪婆山砂丘遺跡、礼楽囲遺跡、宝鏡湾遺跡といった珠江文明の遺跡が発見されています。これらの文化の発展は、後の中国文明の基礎を築く重要な段階でした。

南アメリカ大陸では、エクアドル南海岸グァヤス地方でバルディビア文化が始まりました。この文化は、この地域における初期の定住生活を示す重要な証拠となっています。

紀元前40世紀は、現在から遠く離れた時代ですが、様々な文化や文明が誕生し、発展した重要な時代でした。地球規模での気候変動や環境変化が、社会構造や文化に大きな影響を与えたことは間違いありません。また、この時代の出来事の解釈には、キリスト教の「若い地球創造説」のような異なる視点も存在します。さらに、ベーダ・ヴェネラビリスや旧約聖書などの神話や伝説には、この時代に関する様々な記述が残されています。これらの多様な視点を取り入れながら、紀元前40世紀の世界を理解していくことが重要です。

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