紀元前408年

紀元前408年：激動の時代、東西の動き

紀元前408年は、古代世界において幾つもの重要な出来事が発生した年でした。ペルシア帝国とギリシア諸都市国家間の対立は激化の一途を辿り、一方では新たな政治的・軍事的な動きが台頭し、文化面では著名な芸術作品が誕生しました。

ペルシア帝国の動向：スパルタ支援とキュロスの台頭

ペルシア帝国のアケメネス朝では、ダレイオス2世がアテナイとの戦争を継続し、スパルタへの支援を強化する決断を下しました。王妃パリュサティスの影響もあり、息子のキュロスがリュディア、プリュギア、カッパドキアの太守に任命され、小アジアのペルシア軍の総司令官に就任しました。この人事異動により、それまで小アジアの総司令官であったティッサフェルネスは、カリア太守へと役割を限定されました。

ダレイオス2世は、キュロスにスパルタ艦隊再建のための資金提供を命じ、スパルタ支援の強化を指示しました。キュロスは、その権限と資金を基に、ギリシア人を含む傭兵隊を編成し始め、自身の野心を抱きつつ、ペルシア帝国の政策を実行に移し始めました。このキュロスの活動は、のちのペルシア帝国とギリシア世界におけるパワーバランスに大きな影響を与えることになります。

ギリシア世界：アルキビアデスの帰還と新たな戦争

ギリシアにおいては、アテナイにアルキビアデスが7年ぶりに帰還しました。かつて秘儀冒涜の罪で追放されていた彼は、汚名を返上し、総司令官としてアテナイの政治・軍事の中枢に復帰を果たしました。

彼は専制的な権限を与えられ、サモス島へ向かい、自身の艦隊と合流しました。一方、スパルタの提督リュサンドロスはエペソスに到着し、キュロスの支援を受けて大規模な艦隊を編成し、アテナイに対抗する勢力を強化しました。オリンピックの祭典では、哲学者ゴルギアスがスパルタとペルシアの同盟を痛烈に批判する演説を行い、ギリシア世界の意見の分断を反映していました。

シチリアの動乱

シチリア島では、カルタゴの軍勢によるヒメラの破壊という悲劇的な出来事が発生しました。この出来事は、シチリアにおける勢力争いの激しさを示し、地中海世界全体の情勢にも影響を与えたと考えられます。

文化面：エウリピデスの活躍と新たな出発

文学の分野では、エウリピデスが悲劇『オレステス』と『フェニキアの女たち』を上演しました。しかし、アテナイでの活動に満足できず、マケドニア王アルケラオス1世の招聘を受けてアテナイを去りました。この決断は、彼の芸術家としての生涯に新たな章を開き、同時にアテナイの文化界にも影響を与えたと言えるでしょう。

著名な人物の誕生と死

この年には、後に著名な天文学者、数学者として知られるクニドスのエウドクソスや、シュラクサイの僭主となるディオンが誕生しました。一方、この年の出来事に関する記録では、著名な人物の死に関する記述は見当たりません。

まとめ

紀元前408年は、ペルシア帝国の積極的な軍事介入、ギリシア世界の政治的・軍事的な混乱、シチリアの動乱、そして文化面での創造という様々な出来事が複雑に絡み合った時代でした。これらの出来事は、古代世界の将来に大きな影響を与え、歴史の重要な転換点の一つと言えるでしょう。

もう一度検索