紀角

紀角（きのつの）について

紀角は古代日本における重要な人物で、生没年は分かっていませんが、『日本書紀』や『古事記』などの資料に登場します。彼の名前は『日本書紀』では「紀角宿禰」、『古事記』では「木角宿禰」として記録されており、他の文献には「紀都奴」や「都怒足尼」とも表記されています。「宿禰」は当時の尊称であり、歴史的に見ても彼の存在は特筆すべきものです。紀角は武内宿禰（たけうちのすくね）の子として知られており、紀朝臣として皇別の紀氏の祖とされています。また、対朝鮮外交においても重要な役割を果たしたとされています。

系譜とは

紀角の系譜については『日本書紀』には記載がありませんが、『古事記』の孝元天皇の段では、建内宿禰の子供の中で第5子として名前が挙げられています。また、『新撰姓氏録』では紀朝臣の条において、彼が武内宿禰の子であることが記されています。さらに『先代旧事本紀』の「国造本紀」に登場する都怒国造条には、紀角宿禰の子である田鳥足尼のことが紹介されており、後世の系図にも紀角の息子として紀遠耶や紀白城、真利宿禰などが見られます。

紀角の記録

『日本書紀』の応神天皇3年の条では、百済の辰斯王が天皇に対して失礼な態度を示した際、紀角宿禰は羽田矢代宿禰や石川宿禰、木菟宿禰とともに百済に遣わされ、王に対して無礼を指摘しました。この結果、辰斯王は殺されて謝罪し、紀角たちは阿花王を立てて帰国することとなりました。

さらに、仁徳天皇41年の条では、百済に遣わされ、初めて郡境を分けて地元の産物を記録したとされています。この際にも無礼を働いた百済王同族に対して紀角が叱責した結果、百済王は謝罪し、無礼な者を鉄鎖で縛って日本に送ることとなったとされます。『古事記』には彼の事績についての具体的な記載は見られませんが、紀角が外交において果たした重要な役割は間違いなく存在しています。

後裔と氏族

紀角の後裔に関しては『古事記』や『新撰姓氏録』での記載があり、紀氏や角氏、坂本臣などの諸氏族の祖とされています。特に左京皇別の紀朝臣や角朝臣、さらには坂本朝臣などが紀角宿禰の子孫として名を連ねています。また、河内や和泉などの地域においても紀角の子孫とされる氏族が見られ、彼の血脈は今なお様々な形で受け継がれています。

国造としての役割

『先代旧事本紀』に記されているように、紀角の後裔には都怒国造が存在します。これは仁徳天皇の時代に紀臣同族の都怒足尼の子である田鳥足尼が国造として立てられたもので、現在の山口県周南市などにあたる地域を治めることとなります。紀角の存在は古代日本の政治や文化の形成に深い影響を与えたと言えるでしょう。

参考文献

紀角に関する詳細は、岸俊男による『国史大辞典』や、吉川弘文館の『日本古代氏族人名辞典』を参考にすると良いでしょう。彼に関連する人物や事象については、今後の歴史研究でも解明が進むことが期待されます。

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