紅小兵

紅小兵（こうしょうへい）

「紅小兵（ホンシャオピン）」とは、中華人民共和国において、特に文化大革命という特異な時代に存在した、中国共産党の指導下に置かれた児童組織、あるいはその構成員を指す固有名詞です。これは、当時の政治的な状況を色濃く反映した呼称でした。

紅小兵の歴史をたどる上で、まずその前身である「中国少年先鋒隊（ちゅうごくしょうねんせんぽうたい）」について触れる必要があります。中華人民共和国が成立した1949年、7歳から14歳までの学齢期の子供たちを対象としたこの組織が設立されました。これは、建国後の若い世代を共産主義思想に基づいて育成するための重要な組織でした。

しかし、1966年5月に文化大革命が中国全土で開始されると、社会構造のあらゆる面に大きな変化がもたらされました。教育分野も例外ではなく、従来の制度や組織が見直される中で、児童組織の名称にも変更が加えられました。1967年12月、中国少年先鋒隊は「紅小兵」と名を改めたのです。この名称変更は、文化大革命という激動の波が、子供たちの世界にも及んでいたことを示しています。紅小兵は、文字通り「小さな紅衛兵」を思わせる響きを持ち、当時の政治的な熱狂の中で子供たちが果たした役割や位置づけを象徴するかのようでした。彼らは共産党のプロパガンダを学び、革命思想を共有するよう促されました。

文化大革命が進行する中で、子供向けの出版物にも変化が見られました。文革が始動すると、それまで発行されていた児童向け雑誌の多くは、政治的な理由などから発行停止に追い込まれました。しかし、数年後の1970年頃になると、各地の人民出版社などから、新たな時代の要請に応える形で子供向けの雑誌が次々と創刊されます。その中には、『紅小兵』や『紅小兵画報』といった、紅小兵の名を冠した雑誌も含まれていました。これらの雑誌は、子供たちに革命思想や共産党の方針を伝える重要なメディアとしての役割を担っていたと考えられます。当時のスローガンや英雄像、あるいは農村での生産活動などが、子供にも分かりやすい形で紹介されていたことでしょう。

1976年に文化大革命が終結し、中国社会が混乱から脱却して新たな時代へと向かう中で、紅小兵を取り巻く状況も変化しました。文革期に政治的な意味合いを強く持って誕生した紅小兵の名は、時代とともにその役割を終えていきました。その名を冠した雑誌も、発行が終了したり、別の名称に変更されたりするなど、姿を消していきました。

そして、紅小兵という名称そのものも、歴史の一部となりました。1978年10月27日、中国共産主義青年団の第10回全国代表大会の際に開催された第1回中央委員全体会議において、児童組織の名称を再び「中国少年先鋒隊」に戻すことが正式に決定されました。これは、文化大革命という時代が終わりを告げ、それ以前の体制や名称が復活する流れの中で行われた措置であり、中国社会が正常化へと向かう過程の一端を示す出来事でした。

このように、「紅小兵」という言葉は、単なる児童組織の名称ではなく、中華人民共和国の歴史における特に文化大革命という困難な時期を映し出す鏡のような存在と言えます。それは、政治が子供たちの世界にも深く介入し、教育やメディアを通じて特定の思想が浸透させられた時代の記憶を留めています。彼らの存在は、革命期の熱狂とその後の変化を理解する上で重要な手がかりとなります。

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