紅葉賀

紅葉賀：光源氏の青春と秘密の恋、そして宮廷の陰謀

『源氏物語』第7帖「紅葉賀」は、主人公光源氏の18歳から19歳にかけての1年間を鮮やかに描いた物語です。物語の中心は、朱雀院（一の院、一説には桐壺帝の父）の50歳の祝賀。この華々しい祝典を背景に、光源氏の恋、藤壺の立后、そして宮廷の陰謀が複雑に絡み合い、読者を魅了します。

前半：華麗なる祝典と隠された真実

朱雀院の50歳祝賀の準備で、都は賑わいを見せていました。桐壺帝は愛妃・藤壺の妊娠を喜び、祝典を盛大に行うことを望んでいました。臣下たちも、舞楽の準備に余念がありません。しかし、この祝典の影で、大きな秘密が隠されていました。藤壺が身ごもっていたのは、帝の子ではなく、光源氏の子だったのです。

この秘密が、藤壺のライバルである弘徽殿女御に発覚すれば、光源氏と藤壺は破滅の危機に瀕します。それでも光源氏は、藤壺への手紙を送り、面会を求め続けました。一方、藤壺は立后を控え、罪悪感に苛まれながらも、光源氏との関係を断ち切ろうとします。

祝典では、光源氏は舞を披露しますが、心は晴れやかではありません。唯一の慰めは、北山から引き取った若紫（後の紫の上）との触れ合いでした。帝は、藤壺のために特別に試楽（リハーサル）を催します。光源氏が舞う姿は美しく、御簾の奥の藤壺も一瞬、罪悪感を忘れ、その美しさに見入ります。しかし、弘徽殿女御は、光源氏の美しさに嫉妬し、皮肉を込めて言葉を投げかけます。

祝典後、光源氏は正三位に叙爵されます。この恩寵に、弘徽殿女御は帝の偏愛を批判し、東宮を窘めます。翌年2月、藤壺は男御子（後の冷泉帝）を出産。帝は喜びますが、光源氏と藤壺は罪悪感にさいなまれます。

後半：喜劇的な挿話と悲恋の深まり

物語は、前半とは趣を変え、喜劇的な挿話を挟みます。桐壺帝の女官・源典侍は、色好みで知られていました。光源氏と頭中将は、冗談半分に彼女に近づきますが、源典侍の奔放さに辟易します。ある夜、源典侍の宿所で、光源氏は襲撃を受けますが、相手は頭中将でした。二人は冗談半分で喧嘩を始め、最後は笑い転げながら帰ります。

その年の秋、藤壺は中宮に立后します。長年仕え、東宮の生母である弘徽殿女御は激怒し、帝を責めます。光源氏も宰相（参議）に昇進しますが、藤壺への想いは募るばかりでした。

「紅葉賀」は、華やかな宮廷の祝典と、光源氏と藤壺の悲恋、そして宮廷の陰謀が複雑に絡み合った、奥深い物語です。若紫との出会い、源典侍を巡る騒動など、様々なエピソードが織り込まれ、物語に奥行きを与えています。光源氏の心情、そして周囲の人々の思惑が繊細に描かれ、読者の心に深く刻まれる作品と言えるでしょう。

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