納本制度

納本制度

納本制度とは、国内で発行された全ての出版物を、国立図書館などの指定機関に義務的に納入させる制度です。この制度は、国民の文化的活動の記録である出版物を集積・保存し、全国書誌を作成することを主な目的としています。また、著作権の登録や出版物の検閲を目的としていた時代もありました。

納本制度の目的と仕組み

納本制度の主な目的は、国内出版物の網羅的な収集、永久的な保存、そして全国書誌の作成です。これにより、国民は自国の出版物にアクセスでき、出版物の散逸を防ぐことができます。納本図書館は、通常、各国の国立図書館が指定され、出版者は刊行物の最良の版を納入する義務を負います。

ただし、納本制度の運用は、各国の出版業界、図書館制度、法制によって異なります。日本では、国立国会図書館が直接納本を受け、納本された出版物は国有財産となります。しかし、国によっては、契約による寄託として所有権を受託者に移転させない場合や、別の機関が受け取って国立図書館に交付する場合もあります。

歴史

納本制度の起源は、古代エジプトのアレクサンドリア図書館に遡るとも言われています。アレクサンドリア図書館では、訪れる人が持っている書物を没収し、写本を作成してから返却していました。

近代的な納本制度は、1537年にフランスのフランソワ1世が発したモンペリエの勅令に始まります。この勅令により、出版者は出版物を王立図書館に納本する義務を負いました。その後、17世紀初頭のイングランドで、トーマス・ボードリーが書籍商組合と契約し、ボドリアン図書館への納本制度を構築しました。

18世紀から19世紀にかけて、納本制度はヨーロッパ各国に広まりました。アメリカ合衆国では、議会図書館が著作権登録制度を通じて納本を受ける権利を獲得し、国立図書館の機能を持つようになりました。

日本では、1875年に東京書籍館が発足した際、出版条例による検閲のために提出された出版物の一部を交付する形で納本制度が始まりました。第二次世界大戦後、1948年に国立国会図書館法が制定され、図書館資料を収集するための納本制度が開始されました。

20世紀後半には、ユネスコの定義により、納本制度は国立図書館の必須要件として位置付けられるようになりました。

諸外国の納本制度

日本の納本制度

現在の日本では、国立国会図書館法によって納本制度が規定されています。納本の対象となるのは、図書、雑誌、楽譜、地図、電子出版物などです。民間の出版者は、納入した出版物の小売価格の5割にあたる金額を代償金として受け取ることができます。納本を怠った場合には、罰則も定められています。

アメリカ合衆国の納本制度

アメリカ合衆国では、著作権法により納本制度が定められています。国内で発行されるあらゆる著作物は、議会図書館の著作権局に無償で納付する必要があります。納付を怠った場合には、罰金を科す規定も存在します。

日本の納本制度の課題

日本の納本制度には、納本漏れの問題、出版物の種類や流通経路による納本率のばらつき、電子書籍への対応の遅れなどの課題があります。また、年間出版点数の増加により、書庫のスペースが逼迫しているという問題もあります。

不正な代償金取得を目的とした納本や、収蔵する際にカバーやオビを廃棄することに対する批判もあります。また、内容や物理的形態によっては納本を拒否される事例もあります。

まとめ

納本制度は、国民の文化的営為を記録し、未来に伝えるための重要な制度です。制度の課題を克服し、より効率的かつ効果的な運用を目指していく必要があります。

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