西宮記

西宮記（さいきゅうき）

概要

『西宮記』は平安時代に源高明によって書かれた有職故実や儀式に関する文献です。源高明は醍醐天皇の皇子として生まれましたが、後に臣籍降下し、左大臣にまで昇進しました。しかし、安和の変により大宰府に左遷されたことが知られています。彼は『源氏物語』の光源氏のモデルの一人とも言われ、彼の住居が西宮側に位置していたため、「西宮左大臣」という異名がつき、書名の由来ともなっています。

執筆時期については正確にはわかっていませんが、安和の変の際に大宰府に送られた息子、源俊賢に有職故実を伝えるという目的で書かれたとされています。『西宮記』は数回の増補や校訂を経たとされており、初稿本や再稿本など異なるバージョンが存在しています。また、高明の死後、後一条天皇の時代に内容の整理や加筆が行われたという意見もあります。

構成と内容

『西宮記』は、定期的に行われる行事や儀式について、1月から12月にかけて月ごとに配列された「恒例」と、臨時に発生する行事について記された「臨時」の二つに分類されます。個々の記述は、割注を含めた「本文」と、さまざまな文献を引用し出典を示す「勘物」から構成されており、文献の引用は頭書・傍書・裏書といった形式で行われています。

この書物は、10世紀の宮中儀式の内容を知るための基本的な資料とされており、特に重要な価値を持つ文献です。具体的な巻数については様々な説があり、現存する書物には17巻や18巻本が見つかっています。その中でも、15巻本は高明が編纂した原本と考えられていますが、現在は存在していません。代わりに、内容が整備された10巻本が広く流布しています。

現在の状況

『西宮記』の古写本としては尊経閣文庫に保存されている巻子本（18巻）、東山御文庫にある巻子本（3巻）、宮内庁書陵部にある巻子本（17巻）などが知られています。中には江戸時代に写された部分も含まれています。これらの文献は、今後の研究においても不可欠な資料となるでしょう。

脚注

著名な刊本には、近藤瓶城による『史籍集覧』や、育徳財団の『西宮記 前田本』、吉川弘文館の『故実叢書』などがあります。また、土田直鎮と所功が校注した『神道大系 朝儀祭祀編 2 西宮記』や、八木書店の影印集成も参考文献として挙げられます。さらには早川庄八や所功による解説書があり、これらは本書の理解を深めるための貴重な情報源となっています。

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