紙人形春の囁き

紙人形春の囁き

『紙人形春の囁き』は、1926年（大正15年）に公開された溝口健二監督による日本の長編サイレント映画です。この作品は、溝口監督の現存しない作品の一つであり、その全貌を知ることは現代では叶いません。日本映画データベースでは「紙人形の春の囁き」と表記されていますが、これは誤りです。

制作の背景

本作は、関東大震災以前に日活向島撮影所で助監督を務めていた溝口健二が、師事していた田中栄三のオリジナル脚本を基に監督しました。田中栄三は、1922年（大正11年）に同じ向島で監督した『京屋襟店』で「革新的映画」と称されました。本作では、『京屋襟店』で美術デザイナーを務めた亀原嘉明が、日活大将軍撮影所の大ステージに家一軒を構築し、そのセットデザインは当時としては画期的でした。

1926年2月28日、日活本社の配給により、浅草公園六区の三友館を皮切りに全国で公開されました。同年のキネマ旬報ベストテンで第7位にランクインし、高い評価を得ました。また、山本嘉一の娘役を演じた梅村蓉子の出世作としても知られています。

さらに、「相撲取」役で出演した根岸東一郎は、2年後の1928年（昭和3年）に牧野省三監督の『雷電』で大関・雷電爲右エ門役を演じ、主演を務めたほか、同年に映画監督としてもデビューしました。

現状

しかしながら、本作の上映用プリント、ネガ原版などは東京国立近代美術館フィルムセンターに所蔵されておらず、マツダ映画社の「主な所蔵リスト」にも掲載されていません。そのため、現在では鑑賞することができない、幻の作品となっています。

スタッフ

監督・編集：溝口健二
原作・脚色：田中栄三
撮影：横田達之
照明：鈴木柳太郎
装置（美術）：亀原嘉明
字幕：小栗美二
助監督：三上良二
撮影助手：中山良雄
製作：日活大将軍撮影所新劇部

作品データ

上映時間：99分（11巻 / 2,731メートル）
フォーマット：白黒映画 - スタンダードサイズ（1.37:1） - サイレント映画
初回興行：浅草・三友館

キャスト

山本嘉一 - 池田半兵衛
島耕二 - 長男・銀之助
梅村蓉子 - 妹・お種
市川春衛 - 乳母・中村お霜
岡田時彦 - 象牙商の息子・貝島純夫
宮部静子 - 女給・藤倉愛子
妹尾松子 - 柳橋芸者・松相模の小芳
笹谷源三郎 - 糸屋の老番頭・渡辺善兵衛
坂東三江紫 - 愛子の母・藤倉お辰
根岸東一郎 - 相撲取

関連書籍

『紙人形春の囁き』、田中栄三、文藝春秋社出版部、1928年

外部リンク

紙人形の春の囁き - 日本映画データベース (項目名に誤字)
紙人形春の囁き - allcinema
Paper Doll's Whisper of Spring - オールムービー（英語）
* Paper Doll's Whisper of Spring - IMDb（英語）

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