紫雲 (航空機)

紫雲（しうん）

紫雲は、第二次世界大戦中に日本の海軍によって開発された水上偵察機で、略符号はE15K、連合国軍におけるコードネームは“Norm”です。この機体は、敵機の制空権下でも偵察任務を遂行できる高速水上偵察機として設計されました。1943年8月には紫雲一一型として制式採用されましたが、運用上の問題が多発し、わずか数機の生産にとどまりました。

概要

紫雲は、高速戦闘機を凌ぐ速度を実現するために様々な新技術を採用した野心的な機体でした。この機体は当初、「仮称二式高速水上偵察機」と呼ばれ、当時の最新技術を駆使して設計されました。

具体的には、主に以下の特徴がありました：

• - 日本初の2重反転プロペラを採用し、高速性能を強化。
• - 緊急時に主フロートを切り離す機構を搭載していたが、実験は行われなかった。
• - 層流翼と全金属製の機体構造、油圧式二重フラップを装備。
• - 翼端部分は艦上での格納を考慮し、上方向に折りたためる設計となっていました。

開発経緯

紫雲は1939年に海軍からの指示を受けた川西航空機によって試作が開始されました。当時、海軍が必要とするのは水上型機体でありながら、戦闘機よりも高速であることでした。この要件に応じて、川西は新たなアイデアを取り入れ、開発を進めました。

1941年12月に試作第一号機が初飛行しましたが、多くの新機構が問題を引き起こし、その後も長期にわたって改修が行われました。ようやく1942年10月に海軍に納入されると、最高速度は468km/hと確認されましたが、敵機には劣っており、さまざまな故障が報告されることとなりました。それでも海軍は、軽巡大淀型艦艇に搭載するため採用を決定し、増加試作機を発注しました。

運用と生産

紫雲は制式採用後、1943年と1944年にそれぞれ5機と2機が製作されました。しかし、実用試験の結果が不良だったため、増産は中止され、総生産機数は試作機や増加試作機を含めて15機に達しないまま終息しました。生産中止の理由については、戦局の変化による方針変更が有力視されています。

実戦としては、特に1944年のサイパンの戦いにおいて、2機が地上で炎上し失われた記録があります。また、敵機に追われる場面でも、損傷しながら生還した機体もありました。

性能

• - 全長: 11.588m
• - 全幅: 14.00m
• - 全高: 4.95m
• - 翼面積: 30.00m²
• - プロペラ: H/S定速2翅反転
• - 全装備重量: 4,100kg
• - 最高速度: 468km/h
• - 乗員: 2名
• - 発動機: 三菱火星二四型（出力1,680馬力）
• - 航続距離: 1,408km
• - 実用上昇限度: 9,830m
• - 武装: 九二式七粍七機銃 × 1、60kg爆弾 × 2

紫雲の開発と運用は、当時の技術の挑戦を示していますが、実用性の欠如がその短命の原因となりました。後に登場した水上戦闘機は、紫雲の教訓を生かし、より現実的な設計に改良されていきました。

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