細川光洋

細川光洋：近代文学と教育を繋ぐ研究者・教育者の軌跡

細川光洋氏は、1967年神奈川県横浜市生まれの日本の国文学者であり、教育者です。専門は日本近代文学と国語科教育法で、特に吉井勇、谷崎潤一郎、寺田寅彦の作品研究で高い評価を得ています。早稲田大学大学院教育学研究科修了後、修士（教育学）を取得。その後、教員として立教英国学院、桐蔭学園中学校、高知工業高等専門学校などで教鞭を執り、教育現場での実践経験を積みました。

2015年には静岡県立大学国際関係学部教授に就任し、現在に至ります。同大学院国際関係学研究科教授も兼務し、研究活動と教育活動の両面で活躍しています。2020年からは、静岡県立農林環境専門職大学生産環境経営学部講師も兼任していました。さらに、母校である早稲田大学大学院教育学研究科博士課程においても単位取得退学という実績を残しています。

学術研究：近代文学への深い洞察と新たな発見

細川氏の研究は、近代文学における作家たちの作品分析にとどまりません。特に吉井勇、斎藤茂吉といった歌人に関する研究は、新たな史料の発見にも繋がっています。例えば、これまで知られていなかった湯川秀樹から吉井勇への書簡を発見し、その内容を明らかにしました。この発見は、敗戦後の京都を詠んだ湯川秀樹の未発表の短歌や、斎藤茂吉と吉井勇の交流を示す貴重な史料の発掘にも繋がりました。

また、寺田寅彦の教育思想にも着目し、文理融合教育や防災教育に関する研究を進めています。高知高専在職中には、土佐弁を用いた短歌創作指導にも携わり、地域文化との関わりも深い研究活動を行ってきました。

これらの研究活動は高く評価され、2012年には『地震雑感津浪と人間――寺田寅彦随筆選集』（編纂：千葉俊二氏との共編）で寺田寅彦記念賞を、2022年には『吉井勇の旅鞄――昭和初年の歌行脚ノート』で前川佐美雄賞を受賞しています。2019年には静岡県立大学学長表彰も受けています。さらに、大原富枝賞、高知県芸術祭文芸賞、高知県短詩型文学賞などの選考委員も務めるなど、日本の文学界に多大な貢献をしています。

教育への情熱：言葉を通して未来へ繋ぐ

細川氏は、文学研究を「言葉を通して先人たちから引き継いだ思考の『しぐさ』（知恵）を学ぶこと」と捉えています。長年の教育経験を通して培われたこの考え方は、氏の教育活動全体を貫く理念となっています。単なる知識の伝達ではなく、言葉を通して過去の知恵を学び、未来へと繋げることを重視する姿勢が、氏の教育スタイルの特徴です。

著作・編纂物

細川氏は数多くの著作、編纂物を発表しています。代表的な著書に『寅彦をよむ』、『吉井勇の旅鞄――昭和初年の歌行脚ノート』などがあります。また、寺田寅彦の作品集の編纂にも携わり、その深い知識と編集力が認められています。これらの活動を通して、近代文学研究の普及にも大きく貢献しています。

所属学会

細川氏は、日本近代文学会、昭和文学会、日本文学協会、谷崎潤一郎研究会、早稲田大学国語教育学会などの学術団体に所属し、積極的に研究活動に参加しています。

まとめ

細川光洋氏は、近代文学研究者として、教育者として、両面で卓越した能力を発揮する稀有な存在です。その研究活動は、新たな史料の発掘や知られざる歴史的側面の解明に繋がり、教育活動は、言葉を通して過去と未来を繋ぐという氏の理念に基づいた、深く意義のあるものです。今後も、氏の研究と教育活動から目が離せません。

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