終電車 (映画)

映画『終電車』解説

『終電車』（原題: Le Dernier Métro）は、1980年に公開されたフランスの歴史ドラマ映画です。巨匠フランソワ・トリュフォーが監督を務め、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデューらが出演しています。第二次世界大戦下のパリを舞台に、芸術と愛、そしてそれぞれの信念が複雑に絡み合う人間模様を描き出し、トリュフォー監督最大のヒット作となりました。

ストーリー

物語は、ナチス占領下のパリ、モンマルトル劇場で繰り広げられます。女優のマリオンは、ユダヤ人である夫ルカの代わりに劇場を切り盛りしていますが、実はルカは劇場の地下室に身を隠し、国外脱出の機会を窺っていました。夫婦の秘密を知る者はなく、夜間のマリオンの訪問がルカにとって唯一の慰めでした。しかし、夫婦の関係はどこか冷え切っていました。

劇場には、ドイツ軍にも顔が利く演出家ジャン＝ルーや、レジスタンス運動に関わる俳優ベルナールなど、様々な人物が出入りします。新作劇『消えた女』は好評を博しますが、親独派の評論家ダクシアはそれをユダヤ的だと批判。ベルナールはダクシアを殴ってしまい、マリオンは劇場を守るために、惹かれ合っていたベルナールを遠ざけざるを得ません。

レジスタンスへの参加を決意したベルナールが劇場を去る日、ゲシュタポの捜査が入ります。マリオンはベルナールを地下室に匿い、ルカを救います。初めて対面したルカは、ベルナールに「妻は君に夢中だ」と告げます。その夜、マリオンとベルナールは結ばれます。劇場は連合軍によるパリ解放の日まで上演を続け、ルカは800日ぶりに陽の光を浴び、マリオンとベルナールを主演とする舞台劇を上演するのでした。

キャスト

マリオン・スタイナー：カトリーヌ・ドヌーヴ
ベルナール・グランジェ：ジェラール・ドパルデュー
リュカ・スタイナー：ハインツ・ベネント
ジャン＝ルー・コルドー：ジャン＝ルイ・リシャール

製作の背景

映画には、トリュフォー自身の経験や、当時の社会情勢が反映されています。

オープニングで使用されたシャンソン『サンジャンの私の恋人』や、ラジオから流れる『雨傘とマント』などの楽曲が、時代を色濃く映し出しています。
ルカのモデルは、実際に自分の劇場の地下室に隠れていたという噂があったルイ・ジューヴェであると言われています。
ダクシアのモデルは、親独派の劇評家アラン・ロブローです。
ベルナールのモデルはジャン・マレーで、彼がアラン・ロブローを殴りつけたエピソードが反映されています。
マリオンには直接的なモデルはいませんが、当時の新聞記事から着想を得たトリュフォー監督の創作によるキャラクターです。

作品の評価

『終電車』は、公開当時から高い評価を受けました。

フランスのメディアによる評価の平均点は、5点満点中3.3点です。
Rotten Tomatoesでは、88%の高評価を得ています。

受賞歴

第6回セザール賞では、作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、主演男優賞など、主要10部門を独占しました。
* 第53回アカデミー賞では、外国語映画賞にノミネートされました。

まとめ

『終電車』は、フランソワ・トリュフォー監督の円熟期を代表する作品であり、第二次世界大戦下のパリを舞台に、人間の愛、葛藤、そして芸術への情熱を描いた感動的なドラマです。ぜひ一度、ご覧になってみてください。

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