経立

経立（ふったち） - 日本の妖怪

経立は、青森県および岩手県において語り継がれている妖怪や魔物の一つです。この存在は、通常の生物学的な常識を超えて長い年齢を重ねたサルやニワトリが変わったものとされており、青森県では「ヘェサン」とも呼ばれています。

歴史と伝承

日本の民俗学者、柳田國男の著書『遠野物語』にも、経立に関する面白い記述があります。特に岩手県上閉伊郡栗橋村（現在の釜石市）でのサルの経立についての伝承は有名です。この地域では、サルの経立は見た目が異様で、特にその体毛を松脂と砂で硬化させたために銃弾も通り抜けないとされています。このため、経立は人間の女性を好み、里から連れ去るとも言われています。このような話は、子供を脅かすための表現として、「サルの経立が来る」という言い回しが使われました。

ニワトリの経立と恨み

また、國學院大學の説話研究会による調査では、岩手県下閉伊郡安家村（現在の岩泉町）でのニワトリの経立にまつわる物語も語られています。昔、雌のニワトリが経立に変わり、自身の卵を人間に食べられたことを恨んで、飼い主の家で生まれた子供たちを次々に命を奪ったという悲劇的な物語があります。この伝承は、経立が持つ強力な呪いのイメージを示しています。

魚の経立のエピソード

同じく安家村には魚が経立になる話も残されています。昔、ある家の娘に美男子が頻繁に訪れていました。しかし、彼の美しさに疑念を抱いた周囲の人々は、彼が化け物であるのではないかと疑いました。そこで、人々は娘に、小豆を煮た湯で彼の足を洗わせるように指示します。すると、男は突然気分が悪くなり、退散したのです。

次の日、娘が海辺に行くと、見知らぬ大きなタラが死んでいるのを見つけました。彼が経立であったという話が伝わり、このエピソードは経立が姿を変え、人間社会にも影響を与える存在であることを示しています。

結論

経立は、単なる妖怪ではなく、日本の各地に存在する文化的な背景や風習を反映した多様な物語として考えられます。これらの伝承を通じて、地方の人々の信仰やそれを象徴する存在の面白さに触れることができます。経立という存在は、恐れや敬意をもって語り継がれており、日本の文化の奥深さを感じることができるでしょう。

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