結婚衣装をつけたエレーヌ・フールマン

『結婚衣装をつけたエレーヌ・フールマン』は、フランドルのバロック期を代表する巨匠ピーテル・パウル・ルーベンスが、1630年から1631年頃に油彩で描いた肖像画です。この作品は、ルーベンスが53歳の時に再婚した16歳の妻、エレーヌ・フールマンを描いています。

エレーヌ・フールマンは、ルーベンスの前妻の息子と同い年であり、ネーデルラント総督フェルナンド・デ・アウストリアをして「アントウェルペンで最も美しい女性」と言わしめたほどの美貌の持ち主でした。彼女は絹とタピスリーを扱う商人の娘で、ルーベンスが以前描いた『シュザンヌ・フールマンの肖像』の妹にあたります。

ルーベンスは、エレーヌとの結婚について、友人のニコラ＝クロード・ファブリ・ド・ペーレスクに次のように語っています。「私は、良家ではあるがブルジョワ階級の若い女性と結婚することにした。皆が私に宮廷の女性と結婚するように勧めたが、私は高貴な人々にありがちな虚栄心を恐れた。そして、私が筆を持っているところを見ても決して恥じないような女性を選んだ。正直に言えば、私は非常に自由を愛しているので、それを年老いた女性と交換することはできない。」

この肖像画では、エレーヌは豪華な金襴のドレスをまとい、真珠や宝石で飾られた頭飾りを身に着けています。これは、当時の高貴なバロック肖像画の典型的なスタイルです。当初、この絵は4分の3の身体像として構想されていましたが、制作中にサイズが変更され、現在の堂々とした画面に拡大されました。エレーヌは椅子に腰かけていますが、ルーベンスは彼女をやや斜め向きに描くことで、彼女の若々しさと自発的な雰囲気を表現しています。

この作品は、1698年にバイエルン選帝侯マクシミリアン2世エマヌエルがギスベルト・ファン・コーレンから購入し、現在はミュンヘンのアルテ・ピナコテークに所蔵されています。ルーベンスの円熟した技量と、愛する妻への深い愛情が感じられる傑作と言えるでしょう。

参考文献
C.H.Beck『アルテ・ピナコテーク　ミュンヘン』、Scala Pulblishers、2002年刊行 ISBN 978-3-406-47456-9

外部リンク
[アルテ・ピナコテーク]]公式サイト、ルーベンス『結婚衣装をつけたエレーヌ・フールマン』 ([https://www.sammlung.pinakotheken.de/en/artwork/4Y2W4B391y) (ドイツ語、英語)
* Web Gallery of Artサイト、ルーベンス『[エレーヌ・フールマン]]』 ([https://www.wga.hu/html_m/r/rubens/09portra/13fourm.html) (英語)

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