絞死刑 (映画)

『絞死刑』は、大島渚監督が1968年に発表した、死刑制度の根源的な問題や在日朝鮮人に対する差別をテーマにした衝撃的な作品です。この映画は、単なるフィクションとしてではなく、社会に対する深い問いかけを孕んでいます。

映画の概要

1968年に公開されたこの映画は、創造社とATG（日本アート・シアター・ギルド）の提携によって制作され、ATGが配給を手がけました。117分、35ミリの白黒作品であり、ATGが独立プロダクションと制作費を折半する「一千万円映画」シリーズの第一弾としても知られています。

ストーリー

物語の中心となるのは、在日朝鮮人の死刑囚“R”です。彼は強姦致死などの罪で死刑を宣告され、絞首刑が執行されます。しかし、通常ならば死亡するはずのRは、絞縄にぶら下がったまま脈が止まらず、処刑は失敗に終わります。縄を解かれて意識を取り戻したRは、処刑のショックによって記憶を失い、心神喪失の状態に陥っていました。

刑事訴訟法の規定により、心神喪失状態にある者への刑の執行は停止されるため、刑務官たちはRの記憶と罪の意識を回復させようと奔走します。しかし、Rの純粋な問いかけは、刑務官たちの抱える矛盾を鋭く突いていきます。映画は、忠実に再現されたという死刑場を舞台に、死刑制度の根源的な問題、在日朝鮮人差別、そして貧困を背景とした犯罪心理といった、様々なテーマについて深く掘り下げています。

Rのモデルとなったのは、1958年に発生した小松川事件の犯人、金子鎮宇（李珍宇）です。

スタッフと出演者

この映画は、以下のスタッフによって制作されました。

製作: 中島正幸、山口卓治、大島渚
監督: 大島渚
監督助手: 小笠原清
脚本: 田村孟、佐々木守、深尾道典、大島渚
撮影: 吉岡康弘
音楽: 林光
美術: 戸田重昌
録音: 西崎英雄
編集: 白石末子
監修: 向江璋悦

また、以下の俳優たちが映画に出演しています。

R: 尹隆道
拘置所長: 佐藤慶
教育部長: 渡辺文雄
教誨師: 石堂淑朗
保安課長: 足立正生
医務官: 戸浦六宏
検事: 小松方正
検察事務官: 松田政男
女: 小山明子
ナレーター: 大島渚

ロケ地

映画のロケ地の一つに、国鉄（現JR）総武線の新小岩駅南口があります。

映画が提起する問題

『絞死刑』は、単なる犯罪ドラマとしてではなく、死刑制度の持つ矛盾や、社会における差別、そして人間の尊厳といった、現代社会にも通じる重要な問題を提起しています。主人公Rの無垢な問いかけは、観る者自身の倫理観を揺さぶり、深く考えさせられる内容となっています。

関連事項

この映画に関連する事項として、以下のものが挙げられます。

小松川事件: Rのモデルとなった事件。
死刑存廃問題: 映画が提起する根本的なテーマ。
監獄法: 映画の内容に関わる法律。

外部リンク

絞死刑 - allcinema
絞死刑 - KINENOTE
Kôshikei - IMDb（英語）

『絞死刑』は、映画史に残る傑作として、今もなお多くの人々に観られ続けています。その衝撃的な内容と深いテーマは、観る者の心に深く刻まれ、忘れがたい印象を与えるでしょう。

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