絶対の愛

『絶対の愛』（原題：시간(타イン)）は、2006年に公開された韓国映画です。鬼才キム・ギドク監督の13作目にあたる本作は、愛の在り方、そして人間の脆さや強さを問いかける、重厚なヒューマンラブストーリーとなっています。

物語の中心は、2年間交際を続けるセヒとジウという恋人同士。深い愛情で結ばれているかに見える二人ですが、セヒの心にはジウへの不安が渦巻いていました。ジウがセヒに抱く愛情に変化が生じているのではないかと、彼女は常に疑念を抱いていたのです。

ある夜、ジウはセヒを抱きしめられなくなります。その原因は、別の女性への想いを抱いてしまったことでした。そのためらいを克服するために、ジウは別の女性を思い描くことで、セヒへの愛情を一時的に置き換えていたのです。

翌朝、セヒはジウの前から姿を消します。彼女は密かに整形手術を受け、新たな自分として生まれ変わろうとしていたのです。

一方、セヒの失踪に心を痛めるジウは、彼女を探すことに疲弊し、旅に出ます。旅先で、ジウは謎めいたサングラスの女性に惹かれますが、その女性はすぐに彼の前から姿を消してしまいます。

そして数ヶ月後、ジウは運命的な出会いを果たします。それは、魅力的なウェイトレス、スェヒとの出会いでした。ジウはスェヒに恋に落ち、新たな恋へと進んでいくのです。

この映画は、愛の複雑さを多角的に描き出しています。二人の間の揺らぎ、セヒの自己変革への試み、そしてジウの新たな恋。これらの出来事が複雑に絡み合い、愛の脆さと強さを同時に見せてくれます。

監督キム・ギドクの独特な演出は、静謐な映像と、登場人物たちの内面を深くえぐる描写によって、観る者の心に深く刻まれます。

主演は、スェヒ役をソン・ヒョナ、ジウ役をハ・ジョンウ、そしてセヒ役をパク・チヨンが演じています。その他、杉野希妃、キム・ソンミンなども出演し、個性的で魅力的な演技で物語を彩っています。

『絶対の愛』は、単なる恋愛映画にとどまらず、人間の心の深淵を覗き込むような、観終わった後も長く心に残り続ける作品です。愛の儚さと、その中で人はどのように生きていくのか、深く考えさせられる、忘れ難い映画体験を与えてくれるでしょう。

もう一度検索