絶対時間と絶対空間

絶対時間と絶対空間

絶対時間（ぜったいじかん）と絶対空間（ぜったいくうかん）は、アイザック・ニュートンが1687年に発表した『自然哲学の数学的諸原理』で導入した重要な概念です。ニュートンは、これらが古典力学の理論的背景を形成していると考えました。彼によると、絶対時間と絶対空間は、いかなる物体や観察者に左右されない客観的な実在の一部です。

絶対時間とは、外からの影響を一切受けずに、その本質に従って一様に流れる時間を指します。この時間を、デュレーションと呼ぶこともあります。対する相対時間は、運動の観察を通して得られる実用的な時間の尺度であり、日常的にはこの相対時間が一般に使われます。ニュートンによれば、絶対時間は観察者の感覚とは無関係に常に一定の速度で進行しており、人間が実際に知覚できるのは相対的な時間のみです。

また、ニュートンは絶対空間についても独自の見解を持っています。彼によると、絶対空間はまったく不変で動くことのない存在です。この空間は、運動する物体の相対位置を測る基準となる相対空間を包含し、我々が知覚するのは相対空間によるものだとされています。

このアイデアは、物理的な事象が発生するための背景として絶対空間と絶対時間が機能すると解釈できます。すなわち、全ての物体には絶対空間を基準とした一つの絶対的な運動状態が与えられ、物体は絶対静止か、あるいは特定の速度で運動しているとされます。ニュートンはまた、経験的な例を挙げてこの考えを裏付けました。たとえば、無の空間に浮かぶ球体が回転することで絶対空間による自転が明らかとなることなどが挙げられます。

一方で、各時代の科学者たちによる絶対空間の批判も見逃せません。ライプニッツは、空間は物体間の相対的な位置以上の意味を持たないと主張しました。ジョージ・バークリーは、何もない空間においては物体が回転すること自体が無意味であると反論。さらに、エルンスト・マッハの考えはこれを進化させ、物理現象は結局物体間の相対運動に基づくと提唱しました。

20世紀に入ると、アインシュタインは特殊相対性理論を発表しました。彼の理論では、空間と時間の概念は結びつき、いずれも観察者の運動状態に依存します。この理論は、従来の絶対時間や絶対空間の考え方を廃止し、時空という一つの構造に置き換えました。

現在では、絶対時間と絶対空間は物理学においては必ずしも必要ではないと認識されています。現代の物理学では、慣性系という相対的な基準系が用いられ、物理法則はガリレイの相対性原理に従って変換されるとされます。このことは、絶対空間の概念が古典力学の枠組みの中でも疑問視される根拠となっています。

さらに、現代の視点から見ると、絶対空間と絶対時間を否定する立場は、両者の操作的な定義を試みたものであり、特殊相対論によってその明確さがより一層強調されたのです。ニュートンは自身の著作の中でも、与えられた空間での物体の運動はその空間が静止しているのか動いているのかに関わらないと指摘しており、慣性系の重要性を認識していました。結局、時間と空間の概念は、物理的な現象と強く絡み合っているため、絶対的な存在としてではなく、相対的に捉えられなければならないのです。

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