絶対格

絶対[[格]]：能格言語における中心的な役割

能格言語において、重要な役割を担う格の一つに「絶対[[格]]」があります。日本語のような主語・目的語の区別が異なる言語体系において、絶対[[格]]は自動詞の主語と他動詞の目的語の両方に現れる格として定義されます。

絶対[[格]]の定義と特徴

絶対[[格]]は、能格言語における文法上の主要な要素です。この言語体系では、主語と目的語の役割が、私たちが日常的に接する言語とは異なる形で表現されます。具体的には、自動詞の主語と他動詞の目的語は、同じ格である「絶対[[格]]」を用いて表現されます。

絶対[[格]]の最も重要な特徴は、その形態上の無標性です。多くの場合、他の格に付加される接辞や変化を持たず、名詞の基本形そのままの形態をとります。そのため、絶対[[格]]は他の格の基底となる形、いわば名詞の原形と考えることができます。これは、能格言語の文法構造を理解する上で、重要な手がかりとなります。

名称の変遷と歴史

現在「絶対[[格]]」として広く認知されているこの格は、歴史的には様々な名称で呼ばれてきました。20世紀後半になってエスキモー語の研究を通して「absolutive」という名称が定着する以前は、「nominative（主格）」と呼ばれることもありました。これは、絶対[[格]]の機能が主格と類似しているという解釈に基づきます。さらに時代を遡ると、「casus passivus」や「casus indifferens」といった呼び名も用いられていました。これらの名称の変遷は、絶対[[格]]という概念に対する理解が時代とともにどのように変化してきたかを示すものです。

絶対[[格]]と能格言語

絶対[[格]]を理解するには、能格言語という言語類型を理解することが不可欠です。能格言語では、主語と目的語の区別が、私たちが日常的に使う言語とは異なります。能格言語では、他動詞の主語は「能格」という特別な格で標示され、自動詞の主語と他動詞の目的語は「絶対[[格]]」で標示されます。このシステムにより、能格言語は主語と目的語の役割を、形態論的に明確に区別しているのです。

関連研究と参考文献

絶対[[格]]に関する研究は、言語学において重要なテーマです。多くの研究者たちが、この格の機能や分布、そしてその言語進化における役割について研究を行ってきました。本稿では、以下の研究者たちの業績を参照することで、絶対[[格]]に関する理解を深めることができます。

Bickel, Balthasar and Johanna Nichols (2011) Case marking and alignment. In: Malchukov & Spencer (eds.), 304-321.
Dixon, R. M. W. (1994) Ergativity. Cambridge: Cambridge University Press.
Haspelmath, Martin (2011) Terminology of case. In: Malchukov & Spencer (eds.), 505-517.
Jespersen, Otto (1924) The philosophy of grammar. London: G. Allen & Unwin.
König, Christa (2011) Marked nominative. In: Malchukov & Spencer (eds.), 535-548.
Malchukov, Andrej and Andrew Spencer (eds.) (2011) The Oxford handbook of case. Oxford: Oxford University Press.
Pilhofer, Georg (1933) Grammatik der Kâte-Sprache in Neuguinea. Berlin: Remier.
角田太作 (2009)『世界の言語と日本語：言語類型論から見た日本語』改訂版. くろしお出版。

これらの研究は、絶対[[格]]の定義、機能、歴史、そして関連する言語現象を多角的に考察しており、能格言語の理解を深める上で非常に役立ちます。 絶対[[格]]は、一見複雑に見える能格言語の文法体系を理解するための重要な鍵となる概念です。

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