維新帝

維新帝（ズイタン帝）の生涯

維新帝（ズイタンてい、ベトナム語: Duy Tân、1900年9月19日 - 1945年12月26日）は、ベトナム阮朝の第11代皇帝です。諱は阮福永珊（Nguyễn Phúc Vĩnh San）、後に阮福晃（Nguyễn Phúc Hoảng）と改めました。7歳という幼さで皇帝に即位し、激動の時代を生き抜きました。

幼くして即位

1907年9月、父である成泰帝が宗主国フランスの圧力により退位させられたため、わずか7歳で皇帝の座に就きました。しかし、これは傀儡としての即位であり、実権はフランスが握っていました。なお、生年月日には異説もあります。

反仏運動と流刑

1916年5月2日未明、ファン・ボイ・チャウが組織した「ベトナム光復会」の反乱計画に呼応し、フエ王宮を脱出。しかし、6日には逮捕され、直ちに廃位されます。その後、父である成泰帝とともに、マダガスカル島沖の孤島であるレユニオン島へ流刑となりました。この出来事は、幼いながらもフランスの支配に抵抗しようとした維新帝の強い意志を示すものでした。

第二次世界大戦中の活動

第二次世界大戦中、維新帝は自由フランスに共鳴。通信技術の知識を生かし、ヴィシー政府の占領下にあったレユニオン島から、連合国側に島の情報を流しました。また、島内のレジスタンス組織へ連合国の状況を伝達するなど、積極的に活動。1942年5月には、ヴィシー政府側にレジスタンス運動が露見し、隔離病院に監禁されましたが、同年11月28日のレユニオン島の戦いで救出されます。

救出後は、自由フランス海軍駆逐艦レオパールの通信要員として参加。12月5日には陸軍少尉に任官されました。パリ解放後の1944年12月5日には大尉、第9植民地師団（ジョセフ・マグナン少将）附となり、1945年7月25日には少佐、9月25日には中佐および大隊長へと昇進しています。この間、連合国のために力を尽くし、祖国解放のために戦いました。

帰国と最期

1945年8月、日本軍の降伏に呼応してベトナム八月革命が起こると、保大帝がホー・チ・ミンの呼びかけにより退位。ベトナム民主共和国最高顧問に迎えられました。これを受け、フランスのド・ゴール将軍は保大帝に代わる親仏派の指導者として維新帝に注目し、同年12月14日に会見を行いました。

帰国のためレユニオン島に戻る途中、12月26日グリニッジ標準時18時30分ごろ、フランス領赤道アフリカ、ウバンギ・シャリ植民地（現在の中央アフリカ共和国）付近で、搭乗していたロッキードC-60が墜落。維新帝は亡くなりました。志半ばでの死は、多くの人々に惜しまれました。

改葬

1987年、維新帝の息子であるバオ・バンと旧阮朝一族は、維新帝の遺骸をアフリカからベトナム・フエへと持ち帰ることを決定。遺体は中央アフリカ共和国当局によって回収された後、1987年3月28日にパリのヴァンセンヌ寺院で仏教式葬儀が執り行われました。この葬儀には、ジャック・シラク首相、ジャック・フォッカール元マダガスカル共和国事務総局長、自由フランス協会会長のジャン・シモン元帥、トラン・カン・カーン駐仏ベトナム大使らも参列しました。同年4月4日、フエに伝統儀礼に従って、祖父である育徳帝陵の傍らに改葬されました。

その後、バオ・バンは2001年に維新帝の生涯を記した著書『Duy Tan, Empereur d'Annam 1900-1945』を執筆し、父の功績を後世に伝えました。

栄典と子女

維新帝は、その功績からバラ付フランス抵抗記念章（1945年3月）を授与されています。

また、複数の女性との間に多くの子女をもうけました。

マリー・アン・ヴィアーレとの子
アルマンド・ヴィアーレ
フェルナンド・アンティーとの子
テレーズ（夭折）
グエン・フク・ルオン・ビン（フランス語名リタ・スージー・ジョルゼット・ヴィン＝サン）
ソランジュ（夭折）
グエン・フク・バオ・ゴク（フランス語名ガイ・ジョルジュ・ヴィン＝サン）
グエン・フク・バオ・バン（フランス語名イヴ・クロード・ヴィン＝サン）
グエン・フク・バオ・キ（フランス語名ジョゼフ・ロジェ・ヴィン＝サン）
ジネット（夭折）
エルネスティーヌ・イヴェット・マリオットとの子
アンドレ・マリオット・ヴィン＝サン


維新帝の生涯は、ベトナムの激動の時代を象徴するものであり、その勇気ある行動と不運な最期は、今もなお多くの人々に語り継がれています。

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