成泰帝

成泰帝（せいたいいてい）

成泰帝（Thành Thái、1879年3月14日 - 1954年3月24日）は、ベトナム阮朝の第10代皇帝です。在位期間は1889年から1907年までで、諱は阮福宝嶙（Nguyễn Phúc Bửu Lân）でしたが、後に阮福昭（Nguyễn Phúc Chiêu）と改めました。

生涯

成泰帝は、育徳帝の子として生まれました。しかし、反皇帝勢力との接触を防ぐため、同慶帝の在位中は母親とともに王宮内で軟禁状態に置かれていました。

19世紀後半から20世紀前半にかけて、ベトナムはフランスの侵略と植民地支配（フランス領インドシナ）に苦しめられていました。同慶帝の崩御後、フランス当局は幼少の頃から聡明であった成泰帝が、都合の良い後継者であると考え、10歳という若さで即位させました。フランスは、成泰帝が反抗心を持たないように教育を施しましたが、成泰帝はそれを見抜き、フランス人の前では政治に関心がないように振る舞う一方で、民情を探るために度々お忍びで王宮を抜け出していました。

成泰帝は西洋文化に強い興味を持ち、ベトナムの君主としては初めて自動車を自ら運転し、髪型も西洋風に変えました。しかし、実権を握るフランスに対して徐々に反抗心を抱くようになり、その行動が露見したことで、1907年に28歳で退位させられ、息子の維新帝に譲位することになりました。

退位後は、ベトナム南部のブンタウに追放されました。しかし、1916年に維新帝が反フランス勢力に加担して廃位されると、成泰帝は維新帝と共に、インド洋のフランス領レユニオン島へ流刑となりました。

その後、半世紀近くを流刑地で過ごし、1945年にベトナムへの帰国が許されましたが、依然として軟禁状態は続きました。帰国後、ベトナム国の元首となった保大帝とも会見しています。第一次インドシナ戦争終結直前の時代に、サイゴンにて75歳で亡くなりました。

流刑先で生まれた子供のうちの一人、ビン・ジウ（1922年 - 2007年）は、ベトナム南部のカントーで大工として生活していました。ビン・ジウの息子、グエン・フォック・バオ・タイは、ホーチミン市でバイクタクシー運転手として働いています。

成泰帝は、激動の時代を生きたベトナムの皇帝であり、フランスの支配に抵抗した君主として、その名は歴史に刻まれています。

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