網走番外地 (東映)

映画『網走番外地』の概要

『網走番外地』（あばしりばんがいち）は、日本映画の金字塔とも言える作品です。1965年4月18日に劇場公開され、製作・配給は東映によるものです。監督は石井輝男、主演には高倉健が抜擢され、この映画は「網走番外地シリーズ」の第一作でもあります。

特筆すべきは、本作品がモノクロ映画であること、シネマスコープの形式で92分間の上映時間を持つ点です。公開当初は、『関東流れ者』という作品と併映されていました。

物語の概要

物語は、冬の網走を舞台にしています。主人公であるヤクザの橘真一は、義理に従って人を斬った結果、懲役3年を宣告され、網走刑務所に送られることになります。囚人としての生活が始まる橘は、2年目にあたる頃、さまざまな苦難に直面します。特に、他の囚人とのトラブルや、自身の過去を回想することで、彼の内面に葛藤が生まれます。

橘は、自分の過去を振り返り、母親と妹を置いて故郷を飛び出した経緯について思いを馳せます。ヤクザとしての生き方が間違っていたのか、自分の選択を見つめ直す機会を得た彼は、心を入れ替える決意を固めます。受刑者たちは彼の変化を「点数稼ぎ」として冷ややかに見ていますが、ただ一人、保護司の妻木は、彼を温かく見守る存在です。

しかし、橘の懲罰房生活中に届いた手紙が、彼の心をさらに揺さぶります。妹からの「母が死の床にある」という知らせを受けた橘は、仮釈放の可能性を狙うこととなりますが、他の囚人たちによる脱獄計画に巻き込まれることに。橘は、その葛藤を抱えながらも、最古参の囚人・阿久田の助けを借りて脱獄を防ぎます。

キャラクターとキャスト

本作には、強い個性を持つキャラクターが多数登場します。橘を演じた高倉健は、迫真の演技で観客の心を掴み、その名は映画史に刻まれることになります。また、権田役の南原宏治や、鬼寅を演じた嵐寛寿郎といった脇役たちも、それぞれの立場から物語に厚みを加えます。

特に嵐寛寿郎が演じる「鬼寅」は、映画史に残る名キャラクターとなり、以降の作品でもたびたびその姿を見せることになります。

撮影と制作の背景

本作品は、実際に存在した脱獄計画を元にしたストーリーで、石井監督は物語にリアリティを持たせるため、北海道の厳しい環境での撮影を敢行しました。しかし、当初はカラー映画として企画されていましたが、さまざまな理由からモノクロに変更されました。この変更について、高倉健は現場の厳しさを語り、撮影中のエピソードを交えながら、苦境を乗り越える過程を思い出しています。

評価と影響

『網走番外地』は公開後、見事な成功を収め、多くのファンを魅了しました。シリーズ化され、後に続く作品たちも高い評価を得ることとなります。この作品のスタートは、東映の映画製作に新たな潮流をもたらし、「不良性感度」という言葉が生まれるきっかけともなりました。特に高倉健はこの映画によりスターダムにのし上がり、その後のキャリアにも大きな影響を与えることになります。

監督の石井輝男は、高倉の魅力を引き出し、彼の二枚目半としての役を成功に導きました。その後の「網走番外地シリーズ」も続々と公開され、観客の支持を受け続けました。石井監督が手掛けた作品群は、任侠映画のスタンダードを確立し、日本映画界における重要な位置を占めるようになったのです。

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