緋牡丹博徒シリーズ

緋牡丹博徒シリーズ：東映任侠映画の金字塔

時代を彩った、最強の女侠客

『緋牡丹博徒』シリーズは、1968年から1972年にかけて東映京都撮影所で制作された、全8作からなる任侠映画シリーズです。主演を務めたのは、藤純子（富司純子）。彼女の代表作として知られ、数々の名優たちとの共演、そしてシリーズを通して描かれる、女ヤクザ“緋牡丹のお竜”の生き様は、多くの観客を魅了しました。

お竜の物語：義理と人情、そして復讐

シリーズを通して描かれるのは、緋牡丹の刺青を背負った女ヤクザ、矢野竜子（通称：緋牡丹のお竜）の物語です。明治中頃を舞台に、父を闇討ちで殺されたお竜は、復讐を誓い、賭場を転々として過ごします。第一作で仇を討った彼女は、その後も渡世の修行として各地を巡り、不正な悪党たちと戦います。義理と人情を重んじ、時に自ら危険を顧みず立ち向かう彼女の姿は、多くの共感を呼びました。お竜のトレードマークである背中の緋牡丹の刺青を披露するシーンは、シリーズの見どころの一つとなっています。

豪華共演陣と個性豊かなキャラクター

シリーズには、鶴田浩二、高倉健、菅原文太といった当時のスター俳優たちが、お竜の敵や味方として交互に出演。彼らの存在感は、作品にさらなる魅力を与えています。また、お竜の義兄弟である熊虎親分（若山富三郎）は、コメディリリーフ的な役どころで、物語にユーモラスな要素を加えています。

加藤泰監督作品の高い評価

全8作はいずれも高い水準を保っていますが、特に加藤泰監督による第3作『緋牡丹博徒 花札勝負』、第6作『緋牡丹博徒 お竜参上』、第7作『緋牡丹博徒 お命戴きます』は、高い評価を受けています。中でも、『緋牡丹博徒 お竜参上』で描かれる、雪の今戸橋で流れ者（菅原文太）にお竜がミカンを渡すシーンは、シリーズ屈指の名場面として知られています。

東映任侠映画全盛期を支えた作品

『緋牡丹博徒』シリーズは、1960年代後半から1970年代前半にかけて東映任侠映画が全盛期を迎えた時代背景の中で、大きな成功を収めました。このシリーズの大ヒットは、東映任侠映画の隆盛を象徴する出来事と言えるでしょう。

製作秘話：岡田茂と俊藤浩滋の戦略

企画・タイトル命名は、東映常務兼企画製作本部長だった岡田茂（後の社長）によるものです。彼は、大映の『女賭博師シリーズ』の成功を受けて、東映でも女版任侠映画を作ることを決定。主演に藤純子を起用し、彼女の父である俊藤浩滋を製作に携わらせました。脚本は鈴木則文が担当し、岡田の指示により、藤純子が片肌脱いで刺青を見せるシーンが盛り込まれました。

藤純子の覚悟と時代の流れ

当時22歳だった藤純子の主演抜擢は、東映の男性中心路線の中で異例のことでした。彼女は、この役を通じて大スターとなり、多くのファンを獲得しました。しかし、人気絶頂の1971年、彼女は結婚を機に女優引退を発表。岡田茂は、彼女の引退を惜しみ、引退記念映画『純子引退記念映画 関東緋桜一家』を製作しました。

『サマーウォーズ』へのオマージュ

2009年公開のアニメーション映画『サマーウォーズ』では、富司純子が演じる登場人物が、一族全員に花札を教えているという設定があり、これは『緋牡丹博徒 花札勝負』へのオマージュであると言われています。

まとめ

『緋牡丹博徒』シリーズは、藤純子の代表作であり、東映任侠映画史において重要な作品です。豪華共演陣、魅力的なキャラクター、そして時代を反映したストーリーは、今日でも多くの人々を魅了し続けています。このシリーズは、日本の映画史に刻まれた、不滅の金字塔と言えるでしょう。

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