総長の首

映画『総長の首』

『総長の首』（そうちょうのくび）は、1979年4月7日に公開された日本の映画で、製作は東映（京都撮影所）によるものです。この作品は、実際に起きた「ベラミ事件」をモチーフにしていますが、実録的な要素はほとんどなく、フィクションとして物語が展開されます。監督は中島貞夫が務め、主演には菅原文太が起用されています。

概要と制作背景

本作は、山口組の逆鱗に触れないようにするため、時代設定を昭和初期の浅草に変更し、事件は創作のきっかけとされているだけです。中島監督は「実録で作ることは現実に生きている人もいるため不可能」と語ったように、リアリティを追求することなく、フィクションの世界に踏み込む選択をしました。

映画の予告編には「沖縄10年戦争」と「ジーンズブルース 明日なき無頼派」といった楽曲が使用されています。

ストーリー

物語は、関東大震災の影響が色濃く残る昭和初期の東京、特に浅草が舞台です。当時の浅草は、ルンペンや酔っ払い、春を売る女性たちが溢れる盛り場でした。この街には、関東侠友会と地元の花森組が群雄割拠し、花森組の組長・花森庄造（安藤昇）と侠友会の幹部・有田栄吉（鶴田浩二）が微妙な均衡を保っていました。

しかし、花森組傘下の血桜団に属する新堂卓（清水健太郎）、金井鉄男（ジョニー大倉）、長谷部稔（三浦洋一）の3人が賭場で侠友会の組員を射殺したことで、均衡が崩れ始めます。この事件から流血の抗争が繰り広げられていき、血桜団団長の八代一明（小池朝雄）は自首する未成年の団員を使って事を収めるが、侠友会の代貸・小池勝利（梅宮辰夫）の激怒を引き起こし、八代は新堂らの目の前で刺殺されます。これにより、新堂たちは復讐を誓い、物語はさらに暗転していきます。

出演者とキャラクター

映画には多彩なキャラクターが登場し、菅原文太が演じる八代順二をはじめ、清水健太郎、ジョニー大倉、三浦洋一などがカラフルな集団劇を形成しています。また、小倉一郎や夏純子などの顔ぶれも見られ、豪華なキャスティングが特徴です。

制作の苦悩と挑戦

制作過程では、特に時代設定を変更することに関して多くの議論があったようですが、中島監督はアナーキズムをテーマにした物語を追求することを選びました。東映は「ニュー任侠路線」として、本作を宣伝し、新しい形のヤクザ映画を模索していました。

丹波哲郎がワンシーンに出演するなど、端役も数多く、意外なキャスティングが楽しめます。撮影は浅草各所で行われたものの、ロケは少なめで、京都撮影所内のセットが多かったとされます。

公開と評価

映画は公開当初、興行成績は期待されたほどではなく、実録映画全盛期の同類作品の半分程度の収益にとどまりました。批評家たちは、作品が既存のヤクザ映画とは異なる狙いを持つことを評価しつつも、全体としてはギクシャクした部分もあると指摘しています。

まとめ

『総長の首』は、1970年代の日本映画における転換点として位置づけられ、実録映画路線の終焉を迎える中、新たなヤクザ映画の可能性を模索した作品であると言えます。当時の若手俳優たちが集結し、アナーキズムをテーマにした物語がどのように描かれているのか、ぜひ一度観てみる価値があります。彼らのエピソードがどのように発展するのか、興味を持って観ることができる作品です。

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