線路容量

線路容量について

鉄道における線路容量とは、ある線路を単位時間あたりに走行可能な列車本数を示す値であり、通常は1日あたりの列車本数で表現されます。この値は、その線路を使ってどの程度の旅客や貨物を輸送できるかを示す重要な指標となります。

単線区間の線路容量

単線区間における線路容量（N）は、以下の式で表されます。

math
N = \frac{1440}{t + c}f


ここで、

t: 駅間所要時間（分）
c: 駅における閉塞取扱時間（分）
f: 線路利用率

を表します。

閉塞取扱時間とは、ある方向からの列車が駅に到着後、転轍機を操作し、反対方向の列車が出発可能になるまでの時間です。自動信号区間では1.5分、非自動信号区間では2.5分が標準とされています。

線路利用率は、実際に線路が使用される時間の割合を示し、夜間の保線作業やダイヤ構成の効率性によって変化します。標準的な値は0.6とされています。また、速度の異なる列車が混在すると、待ち合わせ時間が増え、線路利用率が低下します。

線路容量は、対象路線で最も低い区間に制限されるため、駅間隔が長いと全体の輸送能力が低下します。そのため、駅は均等に配置されることが望ましいとされます。

単線区間の実際の計算では、1日の列車運転本数は80本から90本程度が限界とされています。

複線区間の線路容量

同じ速度の列車のみが走行する複線区間では、線路容量（N）は以下の式で表されます。

math
N = 2\frac{1440}{t}d


ここで、

t: 最小時隔（分）
d: 線路利用率

を表します。

2を掛けているのは、上下線の合計列車本数を計算するためです。

最小時隔は、実際には駅の発着や折り返しによって制限されますが、標準的には2分程度です。信号システムや列車の性能も影響します。

より一般的な、追い越しのある複線路線では、以下の式で線路容量が計算されます。

math
N = 2\frac{1440}{hv+(r+u)v'}d


ここで、

h: 高速列車同士の時間間隔（分）
v: 全列車に対する高速列車の割合
r: 追い越し駅での低速列車到着から高速列車到着までの最小時間間隔（分）
u: 追い越し駅での高速列車出発から低速列車出発までの最小時間間隔（分）
v': 全列車に対する低速列車の割合
* d: 線路利用率

を表します。

日本の在来線では、h=3分、r=2分、u=2分が、新幹線では、h=4分、r=2分、u=2分が典型的な値です。新幹線では、0時から6時までを保線に使うため、線路利用率は最大75%になります。

複線区間では、1日の列車運転本数は240本から270本程度が限界とされますが、実際にはパラメータの工夫により、この値を上回る本数が運行されることもあります。

複々線区間の線路容量

複々線区間では、複線の計算方式を応用できます。高速列車と低速列車を異なる線路で運行できるため、線路容量は複線の2倍以上になります。しかし、始終端駅で線路を共有する場合、ボトルネックとなり、線路容量は1.5倍程度に制限されることがあります。

線路容量の実際

線路容量の計算式はありますが、日本では、現場の工夫によって計算値を上回る運行が実現されていることや、最小運転時隔で議論する方が簡単なため、あまり用いられなくなっています。一方、ヨーロッパでは、UIC 406という標準化された方法を用いて線路容量を算出し、コンピュータソフトウェアも活用されています。

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