縫合船

縫合船：古代の知恵が息づく木造船

縫合船（ほうごうせん、Sewn boat）は、金属製の釘や鋲が発明される以前、世界各地で用いられていた木造船の建造技術です。この技術では、木の板を重ね合わせるクリンカー技法を基本とし、動物の腱、植物の根、柳の枝など、柔軟性のある自然素材を用いて板同士を縫い合わせ、船体を形作ります。

縫合船の構造と特徴

一般的な船が竜骨を基盤とした骨組みに外板を張るのに対し、縫合船は外板そのものが構造体となるモノコック構造をしています。注意深く成形された板材は、クリンカー技法によって端部が重なり合うように配置され、縫合によって連結されます。この手法により、船体は柔軟性を持ちながらも、必要な強度を確保することができます。

板材の縫合後、船の内側にフレームを追加して剛性を高めることもあります。また、木製のペグ（木釘）を使用することもありますが、これは板厚が十分な場合に限られます。薄い板では摩擦力が不足し、ペグが抜けやすいため、小型船では縫合が主な連結手段でした。

技術の類似性と代替案

「縫合sewn」という言葉は、時にカヤックのような布や皮革製のボートを連想させるため、「laced boats（紐締め船）」という用語も提唱されています。また、現代の合板工法である「ステッチ・アンド・グルー」も縫合船の技術と共通点があります。この工法では、合板パネルをワイヤーで縫い合わせ、接合部を接着剤で固定し、さらにガラス繊維で補強します。

また、バイキング船の建造に用いられた木釘による接合技術も、縫合船の技術に近いものがあります。

縫合船の歴史

縫合船は、有史以前から存在していた可能性があり、アジアを中心に広く利用されていました。最も古い例としては、紀元前2500年頃のエジプトの「太陽の船」が挙げられます。また、イギリスでは紀元前1930年～紀元前1750年に遡る「Ferriby Boats」が発見されています。

北欧では、紀元前300年頃の「Hjortspring boat」が最古の発見例です。東欧の一部地域では、1920年代まで小型の縫合船が建造されていました。

縫合船の多様な例

縫合構造で建造された船として特に有名なのは、インド太平洋のオーストロネシア人が使用したプロア船と、中東・南アジアで使われたダウ船です。プロア船は、ラッシュラグ技術も使用しており、船体の内側から縫合を確認できます。一方、ダウ船は船体の外側と内側の両方から縫合を確認できるのが特徴です。

これらの船は、地理的な近接性や類似性にもかかわらず、それぞれ独立して発達したと考えられています。

縫合船の具体例

ダウ船
イタオマチプ
ムテペ船
ヌールラン船

まとめ

縫合船は、古代の人々が自然素材を最大限に活用して、海を渡るための船を建造した知恵の結晶です。その技術は、現代の造船技術にも影響を与え、今もなお、私たちに多くの示唆を与えてくれます。

参考資料

A full-scale replica of a Hjortspring Boat, an early Viking sewn boat
Reconstruction of sewing boatbuilding technique & building of a sewn boat replica at Fotevikens Museum
Abstract of Construction and Qualitative Analysis of a Sewn Boat of the Western Indian Ocean
Underwater Archaeology Glossary definition of sewn boat
Ferriby Boats website, with information on archeological finds
Odyssey 5.234-53 and Homeric Ship Construction: A Reappraisal, an analysis of Iron Age Greek ship laced boat construction methods
Traditional watercraft of Viet Nam Construction of a sewn plank boat by two of the last living Vietnamese builders, documented in photographs.
HAND - SEWN BOAT. Local fishing-boat constructed off accurately crafted planks, sewn together with coir rope. flickr.com

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