織田信貞 (左京亮)

織田信貞は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将であり、織田信長の九男として知られています。その生涯は、激動の時代を背景に、武将としての側面だけでなく、その子孫が茶道の世界で名を馳せるなど、多岐にわたる影響を残しました。

生い立ちと出自

信貞の生母については、確かな記録が少なく、諸説が存在します。『寛政重脩諸家譜』には「土方雄久の女」とありますが、土方雄久の生年との矛盾から疑問視されています。一方で、『織田家雑録』には「青山氏」とする記述があり、生母の特定には至っていません。


天正10年（1582年）に父・信長が本能寺の変で亡くなった後、信貞は埴原長久に養育されました。その後、豊臣秀吉の馬廻として仕え、近江国内に1000石の所領を与えられ、従五位下左京亮に叙任されました。天正15年（1587年）には、江州神崎郡に西蓮寺を建立し、同地に邸宅を構えて住みました。

関ヶ原の戦いとその後

慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは、信貞は西軍に与し、兄弟の信高や信吉と共に伏見城攻撃に参加しました。しかし、西軍が敗北したため、所領は没収されました。


『寛政重脩諸家譜』によると、信貞は本来、東軍に加わるべきでしたが、間に合わず、戦後に美濃路で凱旋中の徳川家康に謁見し、信長の子であることに免じて死罪を逃れたとされています。その後、家康に召し抱えられ、西蓮寺の寺領である530石を与えられました。

慶長19年（1614年）からの大坂の陣では、徳川方として従軍し、武功を挙げました。

死去とその後

寛永元年（1624年）、信貞は51歳で亡くなりました。葬られた場所は、京都市東山区にあった上行寺でしたが、同寺は1914年に久遠寺と合併し、現在は上行山妙祐久遠寺となっています。また、織田家の菩提寺である京都大徳寺塔頭総見院にも墓があります。

子孫

信貞の室は、信長の妹と津田元嘉の娘であり、いとこ同士の婚姻でした。家督は次男の貞置が継ぎました。長男の信次は病弱のため家督を継ぐことができませんでしたが、その子である貞幹は、貞置の養子となり、尾張藩の家臣として仕えました。


貞置は、叔父である織田有楽斎（長益）が興した茶道有楽流を継承し、養子の貞幹をはじめ、多くの門人を抱える茶人としても有名でした。また、信貞の娘たちはそれぞれ織田重治と笹治大膳に嫁ぎました。


貞置は後に高家旗本となり、その子孫は徳川将軍家に代々仕え、分家も旗本として繁栄しました。子孫の中には、三熊派の画家である織田瑟瑟もいます。

織田信貞の生涯は、戦国時代から江戸時代への移行期における武士の生き方を示すとともに、その子孫が文化的な側面でも活躍したことを示す好例と言えるでしょう。

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