織田邦男

織田邦男：空からの視点と国家戦略

織田邦男氏は、1952年生まれの日本の評論家であり、麗澤大学特別教授、国家戦略研究所所長という肩書きを持つ。元航空自衛隊空将で、パイロットとして、司令官として、そして現在は評論家として、日本安全保障の最前線に関わってきた人物である。

防衛大学校から空自パイロットへ

愛媛県出身の織田氏は、明石高校卒業後、大阪大学への合格を蹴って防衛大学校に入校。1974年に卒業し、航空自衛隊に入隊する。F-4戦闘機パイロットを経て、アメリカ空軍大学で指揮幕僚課程を修了するなど、着実なキャリアを積む。その後、第301飛行隊隊長、スタンフォード大学客員研究員などを歴任した。

イラク派遣と緊迫の決断

1999年には第6航空団司令兼小松基地司令に就任、2005年には航空開発実験集団司令官、そして2006年には航空支援集団司令官に就任する。この航空支援集団司令官在任中、イラクに派遣されたC-130H輸送機の運用に携わった。限られた機材と人員の負担は大きく、織田氏は当時の安倍晋三首相に直接、その問題点を訴えたというエピソードは有名である。

さらに、同職在任中の2007年夏には、クウェートの現地部隊から、バグダード空港上空でC-130Hがロケット弾攻撃を受けたという緊急連絡が入る。着陸の判断を迫られた状況下、周囲を米軍機が旋回する緊迫した状況の中、織田氏は情報不足を理由に機長への判断委任を決断。責任を自ら負う覚悟を示した。その後、無事着陸の連絡が届き、その迅速かつ的確な判断は、織田氏のリーダーシップと決断力を示すものとなった。

元空将の佐藤守氏は、織田氏について「明敏で教養があり、気骨がある」と評している。この言葉は、織田氏のキャリアと人となりを的確に表していると言えるだろう。

退官後と現在

2009年に航空自衛隊を退官後も、織田氏は三菱重工業顧問、東洋学園大学客員教授、麗澤大学客員教授などを歴任。また、日本戦略研究フォーラム政策提言委員を務め、自身で設立した国家戦略研究所の所長も務める。2022年には瑞宝中綬章を受章し、同年に正論大賞を受賞するなど、その功績は高く評価されている。

映画出演と著作活動

さらに、織田氏は映画にも出演している。2015年の「日本のいちばん長い日」、2017年の「関ヶ原」といった作品に端役として出演したほか、2020年の「日本独立」では憲法学者・宮沢俊義役を演じるなど、その活動は多岐にわたる。

近年では、『空から提言する新しい日本の防衛　日本の安全をアメリカに丸投げするな』、『日本を滅ぼす簡単な5つの方法　世界は悪意と危機に満ちている』（西村幸祐氏との共著）といった著書を出版し、安全保障政策について積極的に発言を続けている。テレビ、ラジオ、インターネット番組など、多くのメディアにも出演し、その知見を広く発信している。

織田邦男氏の経歴と活動は、単なる軍人としてのキャリアにとどまらず、国家戦略、安全保障、そして日本の未来を考える上で重要な視点を提供してくれる。彼の今後の活動からも目が離せない。

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