羅生門綱五郎

羅生門綱五郎：相撲、プロレス、そして銀幕を彩った巨人

羅生門綱五郎。その名は、昭和期の日本プロレス界、そして映画界に強烈な印象を残した巨漢レスラー、俳優を指す。1920年3月5日、台湾に生まれた彼は、203cmの長身と125kgの巨体を持ち、異彩を放つ存在だった。

大相撲からプロレスへ

1940年、花籠部屋に入門。新高山一郎という四股名で初土俵を踏む。その後、泉錦と改名し、幕下15枚目まで昇進したのち、1946年11月場所で廃業。しかし、彼のキャリアはここで終わらなかった。

日本プロレスへと転身した羅生門綱五郎は、その巨体を生かした迫力あるファイトスタイルで人気を博す。リングネームは、黒澤明監督の映画『羅生門』からとったものだが、皮肉にも同作品には出演していない。

銀幕の悪役からコミカルな役まで

羅生門綱五郎は、プロレスラーとしての活動と並行して、多くの映画に出演した。黒澤明監督作品『用心棒』では、三船敏郎演じる桑畑三十郎を投げ飛ばす悪役「閂」として強烈な印象を残している。他にも、『ヒマラヤ無宿 心臓破りの野郎ども』などの作品で、独特の存在感を示した。

彼の演技は、巨体から生み出される不気味さや異様さだけでなく、コミカルな演技にも定評があった。ジェリー・ルイス主演のアメリカ映画『底抜け慰問屋行ったり来たり』では、日本人野球チームのバッター役として出演し、ジェリー・ルイス演じる米国チームを応援する人物に「バカヤロー」と毒づくシーンも演じている。 その演技力は、悪役からコミカルな役まで幅広くこなす高い適応力を示している。

テレビドラマにも出演しており、1959年から1960年にかけて放送された実写版『鉄腕アトム』ではフランケン役を演じた。

ジャイアント馬場との混同

羅生門綱五郎は、日本人と見間違えるほど流暢な日本語を話した。加えて、長身痩躯、細目、頬骨の高い顔立ちなど、ジャイアント馬場と非常に顔が似ていたため、映画などで観客から馬場と間違われることがしばしばあった。マスコミでも間違って紹介された事例もあるという。

プロレスラーとしての個性

プロレスラーとしては、藤田山忠義とのコンビで知られていた。大相撲からの転身、黒澤映画への出演など共通点も多い2人だが、身長差が大きく、当時としては珍しい凸凹コンビとして人気を博した。羅生門綱五郎の得意技は股裂きや逆エビ固めだった。

天保時代の同名力士

興味深いことに、天保年間にも同名の力士がいたという記録が残っており、鳥取県鳥取市湖山町の力士塚には、羅生門綱五郎の名が刻まれた墓が存在する。

羅生門綱五郎は、大相撲、プロレス、そして映画と、複数の分野で活躍した稀有な存在だった。彼の残した足跡は、今もなお人々の記憶に刻まれている。

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