羊痘

羊痘（ひつじとう）について

羊痘は、羊痘ウイルスによって引き起こされる感染症であり、主に羊や山羊に影響を及ぼします。この病気は、家畜伝染病予防法において届出伝染病に分類されており、国際獣疫事務局（OIE）のリストA疾病にも含まれています。羊痘ウイルスは、ポックスウイルス科のコルドポックスウイルス亜科に属し、特にカプリポックスウイルス属に連なるものです。このウイルスは、山羊痘ウイルスと非常に類似していて、一部では同一視されることもあります。

原因

羊痘ウイルスは、その特異な形状から細胞内に組織された封入体を生成します。このウイルスは、核内および細胞質内に存在することが知られており、ウイルスの特徴を把握するためには、顕微鏡による観察が重要です。

疫学

羊痘は、主に気道感染や接触感染により広がります。また、汚染された器具を用いることによって間接的な感染が起こることや、節足動物を介した機械的伝播も確認されています。現在のところ、日本国内では羊痘の発生は報告されていませんが、他の国々においては留意が必要です。

症状

羊痘に感染した動物は、まず40℃を超える高熱を発症します。その後、無毛部に発疹が現れ、硬く腫れた丘疹へと進展します。この丘疹は、粘膜部で潰瘍に変わり、これが鼻炎や呼吸困難を引き起こす要因となります。若い動物においては特に重篤な症例が多く、致死率はほぼ100%に達することもあります。このため、羊や山羊の幼獣に対しては特に注意が必要です。

診断

羊痘の診断には、感染部位から組織を採取し、その後電子顕微鏡でウイルスのビリオンを観察します。この方法に加えて、PCR（ポリメラーゼ連鎖反応）を用いた遺伝子検出も有効とされています。血清学的診断においては、中和テストが特異性が高い一方で、感度が低いという特徴があります。

治療

残念ながら、羊痘に対する効果的な治療法は現在存在しません。感染した動物の状態を安定させるための支持療法が行われる可能性はあるものの、直接的な治療手段はないというのが現状です。

予防

羊痘の予防策としては、常在地域において弱毒生ワクチンや不活化ワクチンが使用されます。適切なワクチンの投与は、感染のリスクを大幅に軽減する手段となります。

参考文献

• - 清水悠紀臣ほか　『動物の感染症』　近代出版　2002年　ISBN 4874020747
• - 獣医学大辞典編集委員会編集　『明解獣医学辞典』　チクサン出版 1991年　ISBN 4885006104

羊痘は家畜にとっての深刻な感染症であり、早期の発見と予防策が重要です。

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