群衆 (1941年の映画)

『群衆』（原題: Meet John Doe）は、1941年公開のアメリカ映画で、フランク・キャプラ監督が手掛けた社会派コメディ作品です。ゲイリー・クーパーとバーバラ・スタンウィックというハリウッドを代表するスター俳優の共演も話題を呼びました。キャプラと脚本家のロバート・リスキンが最後にタッグを組んだ作品としても知られています。

物語の発端は、地方紙『ザ・ブレティン』のコラムニスト、アン・ミッチェルが、経営陣の刷新に伴い解雇されることから始まります。最後の仕事としてコラムを書くよう命じられたアンは、怒りを込めて架空の失業者「ジョン・ドウ」がクリスマスイブに自殺すると脅迫する投書をでっち上げます。

この投書が予想外の反響を呼び、社会問題として注目を集めます。競合紙『ザ・クロニクル』が調査に乗り出す中、『ザ・ブレティン』編集長のヘンリー・コネルは、アンを再雇用し、この機に乗じて新聞の販売部数を伸ばそうと画策します。

彼らは、ジョン・ドウを名乗り出た多くの失業者の中から、元野球選手で経済的に困窮していたジョン・ウィロビーを選び、彼を「ジョン・ドウ」として世間に送り出します。アンはジョン・ドウ名義で社会問題を鋭く批判する記事を執筆し、ジョン・ウィロビーは、与えられた資金とスーツで贅沢な生活を送ることになります。

ジョン・ドウはラジオを通じて全国的に有名になり、彼の言葉は「より良い隣人になろう」というシンプルなスローガンを掲げる草の根運動へと発展していきます。しかし、その陰で『ザ・ブレティン』社長のD.B.ノートンは、ジョン・ドウ人気を自身の政治的野心に利用しようと企んでいました。

全国規模のジョン・ドウ大会が開催されることになり、ノートンはアンに、ジョン・ウィロビーが新政党を立ち上げ、ノートンを大統領候補として推薦する演説原稿の作成を依頼します。

大会当日、ジョン・ウィロビーは酔ったヘンリーからノートンの裏切り行為を知らされます。彼はノートンの陰謀を暴こうとしますが、ジョン・ドウが偽物であることを暴露する号外が配布され、彼の演説は中断されてしまいます。

ノートンの策略により、ジョン・ドウは国民の期待を裏切ったとして非難され、絶望の淵に立たされます。元々の投書にあった通り、クリスマスイブに市庁舎の屋上から飛び降りて自殺しようとするジョン・ウィロビーでしたが、アンの必死の説得と、彼を慕う人々の温かい言葉によって救われます。

この作品は、社会の矛盾やメディアの役割、そして人々の希望と失望を鮮やかに描き出しています。興行的にも大成功を収め、アカデミー賞にもノミネートされた本作は、アメリカン・フィルム・インスティチュートが選ぶ「感動の映画ベスト100」にも選出され、その高い評価は現在も変わることなく、時代を超えて人々の心に響き渡る名作として語り継がれています。1969年に著作権が失効したため、アメリカでは現在パブリックドメイン作品となっています。インターネットアーカイブやYouTubeなどで視聴可能です。

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