群馬事件

群馬事件 - 自由民権運動の激化

1884年5月、群馬県北甘楽郡で発生した群馬事件は、自由党の急進派と農民による民権運動の強い動きが引き起こした歴史的な事件です。この時期、全国的に松方デフレが影を落とし、農民たちは困窮し、生活は苦しい状況にありました。その影響は群馬県にも及び、約30の村から県への陳情が行われるほどでした。

当時、群馬の自由党指導者であった清水永三郎は、農民たちの不満を背景に党勢を拡大しようと考え、集会を開いて反政府感情を煽る活動を行っていました。3月には、彼は湯浅理平や小林安兵衛、三浦桃之助と共に政府を転覆する計画を立てましたが、4月には計画が失敗し、政府の密偵に逮捕されそうになり、他県へ逃亡する事態となりました。

清水はその後東京に向かい活動を続ける一方、湯浅や小林たちは再度蜂起を目指しました。5月初めに予定されていた日本鉄道高崎駅の開業式を利用し農民たちの暴動を企図しましたが、開業式の延期によりその計画も実現しませんでした。三浦が自由党本部に報告を行ったものの、党幹部から賛同を得ることはできず、更には宮部襄らに制止されました。それでも農民たちの不安や不満は高まる一方でした。

ついに、5月15日、湯浅と小林、三浦を中心に蜂起が実行されました。場所は妙義山麓の陣場ヶ原で、初めの目的であった政府転覆から変わり、警察署や高崎鎮台分営を襲撃することになりました。参加した人数については数十名から数千名まで様々な説がありますが、規模は不明です。群衆は松井田警察分署を襲撃しましたが、人数不足と士気の低下から高崎鎮台分営への襲撃は実行されませんでした。

その後、事件は進展することなく、6月16日には北甘楽郡丹生村の高利貸岡部為作邸が襲撃され、実質的に蜂起は収束しました。励まされた抵抗は続かなかったものの、蜂起の幹部であった湯浅や小林、三浦は逮捕され、妙義山中の残党も1ヶ月以内に次々と逮捕されました。最終的には、湯浅、清水、小林ら12名が有期徒刑、さらに20名が罰金刑を受ける結果となりました。

この事件は規模こそ小さかったものの、貧困にあえぐ農民たちが自由党の急進派と結びついた重要な出来事であり、自由民権運動においては武装蜂起の先駆けとなった事例として位置づけられています。群馬事件以降、加波山事件などが続き、農民たちの抵抗は続くことになります。こうして、地域の社会的な不満が集結し、政府への対抗意識を生む契機となったのです。

参考文献

• - 後藤靖『自由民権運動の展開』有斐閣、1966年10月
• - 福田薫『蚕民騒擾録-明治十七年群馬事件』青雲書房、1974年2月
• - 藤林伸治編『ドキュメント群馬事件-昔し思ヘば亜米利加の…』現代史出版会、1979年2月
• - 岩根承成『群馬事件の構造-上毛の自由民権運動』上毛新聞社出版局、2004年4月

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