義演

義演（ぎえん）

義演は、1558年10月1日に生まれ、1626年6月15日に亡くなった真言宗の僧で、戦国時代から江戸時代にかけての重要な人物です。彼は二条晴良を父に、伏見宮貞敦親王王女を母に持ち、その家族関係からも文化的背景が色濃く反映されています。義演は、室町幕府の15代将軍である足利義昭の猶子であり、「義」という文字が名前に付けられました。兄としては九条兼孝や二条昭実、弟には鷹司信房がいます。

生涯の初期、永禄7年（1564年）には三宝院の後継者に決定されたものの、先代の急逝により承認は先延ばしとなりました。その後、義演は醍醐寺の堯助のもとに移り、ここで修行を始めることになります。元亀2年（1571年）に彼は報恩院雅厳から戒師を受けて真言宗の僧侶として得度しました。この年、彼はすぐに大僧都としての地位を得るなど、その才能を早くから発揮していました。

義演は天正3年（1575年）に醍醐寺金剛輪院を再興し、天正4年（1576年）には醍醐寺の第80代座主に就任します。さらに、天正7年（1579年）には大僧正に任じられ、文禄3年（1594年）には東寺長者に選ばれました。特に、豊臣秀吉の朝鮮出兵に際して義演は東寺で仁王経の大法会を修するなど、宗教界での影響力を強化していきます。彼は天皇や上皇、武家からも尊崇を受け、特に秀吉が頻繁に醍醐寺を訪れることからもその信頼関係が伺えます。

文禄4年（1595年）からは秀吉の指示により千僧供養が始まり、義演を含む真言宗の僧侶たちは、この行事に参加することになります。義演は自身の日記に、浄土宗などの他宗派と同じ日に出仕を命じられることに不満を示し、自らの宗派が長年国家鎮護の役割を果たしてきたことを強調しました。千僧供養は当初、出仕の順序による格付けトラブルが発生し、後に月ごとに持ち回りに改められますが、これも義演にとっては不満の種でした。

元和年間に入ると、義演は室町時代に途絶えていた後七日御修法を復興するなど、宗教的活動の幅を広げます。また、彼は三宝院の宝蔵を充実させるため、貴重な書籍の収集にも力を入れ、その中には『法然上人伝記』も含まれています。この書物は法然に近侍した源智によって記された重要な資料とされ、義演によって江戸時代初期に写本が作られ、後に発見されました。

義演が著した『義演准后日記』は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけての社会情勢を知るための貴重な史料となっています。さらに、豊臣秀吉と秀頼による方広寺大仏に関する記録も多く含まれ、研究において重要な参考文献とされています。このように義演は、生涯を通じて真言宗の発展と日本の宗教界に多大な影響を与えた人物であることがわかります。

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