羽澤ガーデン

羽澤ガーデン：広尾に眠る記憶

羽澤ガーデンは、かつて東京・広尾に存在した、由緒ある邸宅でした。大正時代に建てられた日本家屋と、手入れの行き届いた日本庭園は、訪れる人々を魅了し、料亭や結婚式場として、多くの宴や祝宴が繰り広げられました。

中村是公による邸宅の建設

羽澤ガーデンの歴史は、1915年（大正4年）に、鉄道官僚であり、後に貴族院議員や東京市長を歴任した中村是公が自邸として建設したことに始まります。広大な敷地には、2階建ての本館を中心に、離れや茶室が配置され、和風建築を基調としながらも、洋風の応接間や暖炉を取り入れた和洋折衷の様式が特徴でした。

料亭としての歴史

中村是公の死後、邸宅の所有者は何度か変わり、太平洋戦争後には連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）関係者の宴会場としても使用されました。その後、食肉業者・日山商会の創業者である村上禎一が購入し、1950年に料亭「羽澤ガーデン」として営業を開始しました。

羽澤ガーデンは、将棋や囲碁の名人戦の舞台としても知られ、特に将棋名人戦では、しばしば第一局の会場となりました。大山康晴や升田幸三、趙治勲や小林光一など、名だたる棋士たちが、この場所で激戦を繰り広げました。

再開発と記憶の継承

2005年、羽澤ガーデンは惜しまれつつも営業を終了しました。その後、跡地にはマンション建設計画が持ち上がり、近隣住民や文化人による保存運動が起こりました。

最終的には、建物の解体は避けられませんでしたが、庭園の樹木の一部保存や、解体された建物の一部部材をマンション内に再利用することで、かつての記憶を継承する試みがなされました。

現在、跡地に建つ「ザ・パークハウス広尾羽澤」には、かつての庭園を再現した中庭や、料亭時代から受け継がれた暖炉などが設置され、その面影を偲ぶことができます。羽澤ガーデンは、姿を変えましたが、その歴史と文化は、新しい建物の中に確かに息づいています。

参考資料

朝日新聞 (2005年12月18日). “囲碁将棋名勝負の舞台、羽澤ガーデン閉館 東京・広尾”
読売新聞 (2010年12月31日). “邸宅の文化的価値どう判断 羽沢ガーデン訴訟”
* ザ・羽澤ガーデン (2005年12月18日). “［THE HANEZAWA GARDEN］ザ・羽澤ガーデン”

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